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どこにでもある ただ ちいさなおはなし
【ファンタジー 恋愛小説】

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どこにでもある ただ ちいさなおはなし1-29

リリアは驚き声が出ない。
思わず手を離してしまう。
すると少女は口を動かしているのに声が聞こえなくなった。
少女は焦って手を鏡に押し付けてくる。

「もう一人の、あたし?」

怪訝に思いながらまたそっと手を合わせる。
この状況で、一人なのが、本当に嫌だった。

『暖炉の奥を調べてほしいの。きっとガラスの箱が入っていてそれは私達にとってとても重要なものだから』

リリアが暖炉をちらりと見てから眉をしかめる。
すっかり燃え尽きていたから奥まで探れそうではあるが…。

『もし何も無かったら私は貴方の前から消える』

少女はそう目を伏せて呟く。
リリアは手を鏡から離すと暖炉の方を向いた。
暖炉の前のテーブルが嫌でも目に入り、歩いて近づきテーブルクロスを引っ張り、三人にそっと掛けた。
お祈りをして、また、涙がいくつも零れた。

鏡を振り返ると少女も同じように祈りをささげていた。

暖炉の前に立つと意を決したように側にあった灰掻きで灰をどんどん掻き出す。
たまに鏡を見ると少女が大きく何度も頷いた。

家族が死んだばかりなのに、何をやってるんだろう。
でも、どうして、一人じゃないような気がするんだろう。

リリアはそんな風に考えながらもずっと灰を掻き出していた。

あの鏡の中の少女も自分の妄想かもしれない。
本当は何も無いのかもしれない。


やがて、カツンと音がして何かへ当たった。
灰掻きで引っ張りだすと、それは薄い黄色のガラスで出来た小箱のようだった。

灰だらけの黄色の箱をそっと取り出しふぅっと息をかける。
灰が舞いあたりが白くなる。

箱には見たこともない紋章が刻まれており、それは蝶を模していた。

鏡の中の少女を見ると、開ける動作を繰り返す。

リリアがそっとその箱を開けると小さな金色の蝶がたくさん舞い出し、暖炉から空へと抜けていった。

「わっ、あっ」

思わずしりもちを付き、目をぱちぱちさせる。
やっと蝶がいなくなり、箱の中を見るとそこには小さな二つの指輪と古い手鏡と紙が変色した手紙が入っていた。

「なに?これ」

心臓がドクンドクンと音を立てた。
手がどうしてか分からないけれど震えた。
そっと指輪を取り出してみる。
それはとても古くて今にも壊れてしまいそうだ。
よく見ると箱と同じ紋章の指輪とそうじゃないのが、あった。

手紙を手に取ると鏡の中から声が聞こえた気がした。

『お願い開けて、読んで。そして指輪を』

振り返ると少女が一生懸命手紙を開ける動作を繰り返していた。
リリアが頷き手紙を開ける。
きちんと蝋で封がされている。
ずいぶんと昔の物らしいがボロボロの紙の割りに文字はきちんとしており、次のように書いてあった。




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