どこにでもある ただ ちいさなおはなし1-23
オギアスのズボンの色がどんどんと変わっていきました。
少女はゆっくり倒木から降りるとオギアスに近づき同じように膝を付き正面からそっと抱きしめました。
「ごめん……なさい……」
彼の耳元で呟きます。
オギアスは首を横に振って少女の背に手を回し一緒に立ち上がりました。
「……久しぶり、ネーサ。ごめんね、いつも僕が後で」
オギアスが少し力強くネーサと呼んだ少女を抱きしめました。
ネーサは首を横に振ります。
「いいの。きっと、そう言う運命だから。……逢いたかった」
ネーサの目から涙がこぼれます。
オギアスはその姿に昔を思い出し笑みを浮かべてネーサの髪を撫で背中をぽんぽん叩いてやりました。
「ネーサ」
そう呼びかけると涙で塗れた顔でネーサは顔を上げます。
「その、いいかな。キスしても」
そんな風に遠慮がちに言うのは紛れもなくオギアスでネーサは返事の代わりに自らキスをしました。
「聞かなくていいのに」
少し恥ずかしそうにネーサが言い、オギアスはコクンと頷くとネーサの背から手を抜きました。
「遅くなってきたし、一度帰ろう。そろそろおなかも空いてきた」
オギアスが側にあったカゴを背負いネーサに手を向けます。
ネーサがその手を取って、二人で歩き始める。ずいぶんと森のなかに居てしまって二人ともすっかり冷え切っていました。