どこにでもある ただ ちいさなおはなし1-15
「だってお前……」
捨てられたんじゃないのかという言葉を少年は飲み込んだ。
「自分であそこに、居た。貴方が通るのを待っていた」
力強く答え少年を見る。
「お願い、鏡を見て。ずっと我慢してたの、会いたいの『貴方』に」
少年は震える手で鏡を見た。
あれ以来見ていない自分のもう一つの姿。
右と左で半分ずつ違う姿。
片方はカエルで、片方は銀髪の少年だった。
「何が映ってる?貴方と違う人?」
少女が心配そうな顔をして訪ねる。
誤魔化せないそう思い大きく頷く。
「それはカエル?それとも銀髪の少年?」
彼はひどく驚いて少女を見た。
「なん……で」
その言葉を遮るように少女が言葉を続ける。
「今から『貴方』の本当の名前を呼ぶわ。それできっと全て思い出す。何度私達は生まれ変わっても本質的な物は変わらないのね。だから」
一度大きく息を吸い込み震えている少年の手を握った。
「迷ったけど、巻き込みたくなかったけど、貴方の力が必要なの。……オギアス、お願い、目を覚まして」
少女がそう叫ぶように言うと金色の蝶が二人の手の間からぶわっと無数に飛び立ち少年を囲った。
あぁ、そうか。
ごめん、また、君に見つけて貰って。
いつも、僕は……。