届かない想い-8
それほど彼女の存在が今も彼の中でとても大きなものだって言うのが、痛感させられる。
全く眼中にないはずのあたしに向かって、彼は一呼吸置いてから、再び口を開いた。
「手遅れになる前に、助けられたからまだよかったものの、もう彼女をこのまま一人にしておくことが怖かった。
もう寂しい思いも怖い思いもさせたくない、彼女を守ってやれるのは俺だけだって。
だから俺、その出来事の直後に一緒に暮らそうって勢いのまま告白したんだ。
彼女は明確な返事を出さなかったけど、やがて荷物をまとめだしたから、それが彼女の答えだってずっと思ってた」
久留米さんはそこまで言うと、胸ポケットから再び煙草を取り出して、それに火を点けた。
再び広がる、煙草の白い煙があたしの目にジワリと染みる。
彼は、あたしにも“煙草、吸っていいよ”と言ってくれたけど、とてもそんな気分にはなれない。
さっきから溢れて止まらない涙をすすり上げることで精一杯なんだから。
久留米さんはそんなあたしを見て、なぜか優しく微笑んだ。
同情してくれている、とでも思っているんだろうか。
駐車場の古びた蛍光灯の光に照らされた久留米さんの瞳も、さらに潤んでユラユラ揺れていた。