届かない想い-7
「茂と別れたって知ったら、彼女を自分のものにしたいって欲がどんどん出てきて……、今度は本気で茂を忘れさせるつもりで彼女を抱いた。
そん時は酔っ払ってたわけじゃないし、彼女も“茂のこと忘れさせて”なんて言ってたから、この先は俺が彼女の支えになっていこうって決めたんだ。
時間をかけて、少しずつ二人の距離を縮めていけば、彼女もきっと俺を好きになってくれる、そう思って毎日アイツに会いに行った。
でも、そんな矢先に、彼女が知らない男に襲われちまったんだ。
俺と一緒に飯食いに行った帰りの出来事で、一人で夜道を帰らせたばっかりに……」
彼は悔しそうに下唇を噛み締め、ハンドルを持つ手に力を込めだした。
それを見て、少し前に一緒に飲みに行った時のことを思い出した。
あの時、あたしにタクシー使えとしきりに勧め、それでも言うことを聞かないあたしを強引に家まで送り届けてくれたのは、こんな出来事があったからだったんだ……。
それは、あたしと一緒にいたかったわけじゃない。
彼女を一人で帰らせてしまった彼の後悔の念が、二の舞にさせたくないというだけだったんだ。
それをあたしは勝手に勘違いして、一人で舞い上がって……、自分の浅はかさがとてつもなく恥ずかしくなった。