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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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届かない想い-6

鳥肌が全身に広がり、あたしの身体は動けなくなってしまった。


少しずつ威力を発揮してきた心地よいはずのエアコンの風が、まるでブリザードのようにあたしを震え上がらせる。


久留米さんは、“自分は前に進む資格がない”、そう言った言葉の意味を初めて理解できた気がした。


生唾を飲み込んで視線を写真に向ければ、写真の中の3人がなぜか急に色褪せて見えた。


ーーこの幸せそうに笑う二人は、もうこの世の人じゃない。


何も言えないまま久留米さんを見ると、彼は少しだけ顔を上げて、無表情のままさらに続けた。


ゾクッとするほど感情のこもってない顔に瞳だけが潤んでいて、やけにキラキラ反射して見える。


「その無理心中で死んだのは、茂だけだったんだ。

そんなことがあったなんて知らない俺は、アイツ等が一緒に暮らしてたアパートに呑気に顔出して、そこで泣いてる彼女に出くわしてさ。

“茂がいっちゃった”なんて泣いてたから、俺はてっきり茂が彼女を捨てて蒸発したって勘違いしちゃってな。

一人ぼっちになった彼女を支えてやれるのは自分だけなんて、勘違い男は暴走しちゃったんだ」


久留米さんは自分を嘲笑うようにフッと冷たい笑みを浮かべる。


冷めた笑みを浮かべている彼とは対照的に、あたしはボロボロ涙が溢れて止まらない。


あたしは下唇を噛み締めながらスカートの裾を握り締め、ひたすら身体を震わせるだけだった。




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