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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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届かない想い-23

その表情に、ひどく胸が痛む。


なんで、そんな顔するの?


「久留米さ……」


あたしがその理由を問いかけようと、口を開いたのとほとんど同時に、彼が力無く笑った。


「だよな、俺、ホント無神経」


そして、久留米さんは掴んでいた手の力を緩めてそれを引っ込め、自分の髪をかきむしるようにグシャリと握り、


「もう俺、こういう無神経な真似止めるから」


と、潤んだ瞳で笑いかける。


「…………」


「俺さ、いつも無邪気に話しかけてくれる宗川さんに甘えていたんだ。

明るくて、元気で、こっちまでたくさん元気をもらって……。

一緒にいて、すげえ楽しかった」


無理して笑顔を作る久留米さん。


やめて、そんな寂しそうに笑わないで。


振ったくせに、そんな傷ついたような顔をしないで。


掴まれていた手の感触が未だにあたしの中に残って、チリチリ胸の奥を焦がす。


「久留米さん、あたし……」


――聞かなかったことにして欲しいなら、それでも構いません。


ここまで来て、またあたしのズルさが顔を出す。


塁に振られた時と同じ、一切の関わりを断たれるのが怖くて、セフレなんてだらしない関係に身を投じてしまったあの頃と何も変わらない。


でも“一緒にいて楽しかった”って言葉を信じていいなら、単なる職場の後輩でも、部外者でも、それを上手く演じてあげるから。


だから前みたいに側にいさせて下さい。


でもあたしのズルい想いは、






「……でも、それが君を傷つけていたんなら、もう関わらないようにするから」






と言う久留米さんの言葉にかき消された。





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