届かない想い-22
そしてあたしは、車のドアをガチャリと開けた。
「……帰ります」
泣きすぎて鼻がつまった声でそう言い、あたしはバッグを乱暴に掴んだ、その時。
久留米さんは咄嗟にその手を力強く掴んできた。
悔しくも身体が反応してしまい、電気が走ったようにその手がビクンと跳ねた。
気持ちがないくせに、どうしてこの人はなおもこんな真似するんだろう。
そして、振られたってわかっているくせに、どうしてあたしはまだ胸を高鳴らせてしまうんだろう。
やり場のない視線を、掴んだ手に置いた久留米さんは、
「送るから」
とだけ、言った。
咄嗟に膝の上に置いたままのフォトフレームに視線が移る。
眩しい程の笑顔の芽衣子さんが視界に入ると、舌打ちが勝手に出てきた。
芽衣子さんが襲われたことがあったから、単に夜道を一人で歩かせるのが嫌なだけなんでしょう?
好きだから心配してくれるわけじゃない。
芽衣子、芽衣子、芽衣子……。
この人のあらゆる行動に彼女が関わっていると思うと、そういう優しさがよけいに腹立たしくなってくる。
「好きでもない女に、そんな気を遣わなくても結構ですから」
自分でも驚く程冷たい声が出た。
すると、あたしの言葉を聞いた彼は、一瞬だけすごく悲しそうな顔をした。