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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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届かない想い-16

「でも、副島主幹から久留米さんの過去を聞いたら、無性にイライラしてしまいました。

久留米さんの中ではその出来事がずっと残ってしまって、亡くなってしまった彼女のことがいつまでも心を占めていたんですよね?

だからあたしがいくら仲良くなりたくても、どこかで一線置かれていたんだって思い知らされて……、どうしようもなく悔しくなって……つい塁の誘いにのっちゃったんです」


言い訳がましいけれど、それは事実。


久留米さんがよく笑うようになったのは、あたしの存在があったからなんじゃないか、あたしは彼にとって特別だったんではないかいう期待が、見事に打ち砕かれ、完全に勘違いだったと気付かされたからどうしようもなく悔しくなったんだ。


「ズルいし、流されてばかりだけど、久留米さんがこうしてあたしに全てを打ち明けてくれたら、やっぱり気持ちは止められなくなりました。

今なら、塁じゃなくて久留米さんが好きだとハッキリ言えます。

久留米さん、あたしじゃ彼女の……芽衣子さんの代わりにはなれませんか?」


彼の中にこんなに深く刻みつけられている芽衣子さんに、とてもかなうとは思えない。


この鉄仮面男を、写真の中ではこんなに笑顔にさせて、今もなおここまで涙を流させる彼女の存在の大きさが痛感させられるから、あたしは“代わり”という言葉を選ぶしかできなかった。


彼女に勝てないのなら、せめて身代わりでもそばにいたい。


あたしがそう言い終えると、ずっと黙っていた久留米さんは、身体をこちらに向け、ゆっくりあたしに手を伸ばしてきた。





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