届かない想い-15
そしてあたしは、久留米さんの頭にまわしていた腕にギュッと力を込めた。
まるで親から玩具を取り上げられるのを拒む子供のように。
この人を渡したくない、そんな悪あがきをしながら、膝の上に置かれた写真の中の彼女を睨む。
――あなたが好きだったのは、茂さんなんでしょ?
いつまでも久留米さんの心まで奪わないで。
「……あたしじゃ、駄目ですか」
気付くとあたしは震える声を振り絞って、そう呟いた。
久留米さんがあたしから身体を離して驚いたような顔でこちらを見る。
真っ赤になった瞳で戸惑いを見せている彼を、真剣な表情で見つめ返した。
「あたし……、久留米さんのことが好きなんです」
告白としては場違いなシチュエーションなのは承知の上だけど、芽衣子さんに心を奪われたままの彼を見てると、どうしても彼女からこの人を奪いたい衝動が、あたしを襲った。
「……嘘だろ? だってさっき……」
おそらく言いたいのは、さっきあたしが誰とどこから現れたのかを見ていたからだろう。
「確かにさっきまで塁と会ってました。
久留米さんと一緒に飲んだ時、アイツのことを諦めるって決めたのに、ズルズル流されてしまったのはあたしの弱さです。
でも、自分からは連絡とらなかった、それだけは本当です。
あれだけ塁に執着してたあたしがそうすることができたのは、久留米さんのおかげなんです。
あなたが塁の代わりにあたしの心の隙間を埋めてくれたから……」
「…………」
どうしていいのかわからない表情が胸を痛くさせるけれど、ズルさも弱さも全て彼に受け止めてもらいたくて、あたしは無言で見つめる彼をそのままに、あたしはさらに口を開いた。