届かない想い-13
男が泣くのなんて、女々しくてイヤ。
今までのあたしならそう思っていたけれど、彼の震えている背中を見てると、むしろ抱きしめたくなる。
あたしはゆっくり伸ばした手をそっと彼の背中に置いた。
あたしの手が彼の背中に触れた瞬間、彼はとても驚いたようで、ガバッと身体を起こしてあたしを見た。
薄明かりに照らされ、しばらく見つめ合う。
なんとか、彼がこの罪の意識から解放されて欲しいという思いと、この人を笑顔にさせてあげたいという思いがはっきり湧き上がってきた。
この人の心にはこの出来事だけが全てで、きっとあたしが入り込む余地なんてないのはわかってる。
ついこないだまではあたしの心は塁でいっぱいだった。
それでも、あたしの心はいつの間にか、塁ではなくて久留米さんを欲している。
久留米さんの想いに気付きながらも、彼の過去を副島主幹から聞いてしまうと、弱気になって塁の誘いを断れず。
塁に抱かれることで、久留米さんの過去ごと吹っ切ってやるつもりだったけど、やっぱり無理だ。
遠回りして、やっとたどり着いたこの気持ちはもう止められない。
あたしは流れる涙をそのままに、久留米さんの頭を自分の胸に寄せると、そっと両腕で包み込んだ。