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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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届かない想い-11

「それなのに、彼女は“今度は海が見たい”なんて妙なことを言うんだ。

夕方には俺のアパートに荷物が届くから、そんなに悠長に海なんか行ってられないと断ろうとしたんだけど、いつになく神妙な顔して頭を下げるんだよ。

そんな真剣な表情を見たら、言う通りにするしかなかった。

で、彼女に言われるままにたどり着いたのがI岬だったんだ」


その言葉に、あたしは久留米さんの方を見ると、そのまま目を見開いて固まってしまった。


I岬って言ったら、地元でも有名な自殺の名所だ。


ーー写真の二人がもうこの世の人ではないこと、無理心中、自殺の名所であるI岬。


そんなキーワードが結びついて、久留米さんにそこに行きたいといった彼女の胸の内を考えると、あたしの身体はガタガタ震えだしてしまった。


その一方で、久留米さんはズズッと鼻をすすりながらあたしのことなんて全く見ないままに、再び話しだす。


まるで、教会で懺悔をするかのように。


「こんな薄気味悪い所になんで連れてくるんだって思ってたんだけど、彼女は変に上機嫌で、まるでここに来たことがあるかのように、慣れた足取りでどんどん崖っぷちの方へ歩いて行ったんだ。

その日はやけに暑い日で、黙っていても汗が噴き出してくるほどだったんだけど、妙に寒気が止まらなかった。

今思えば、虫の知らせみたいなもんだったのかな。

彼女は断崖の際で立ち止まると、ゆっくり俺の方を向いて、“茂と一緒にここから飛び込んだんだ”って、静かに言ったんだ」


予想はしていたけれど、実際に彼の口から真実を聞かされた途端、全身に鳥肌が立った。


あたしは咄嗟に両手で鼻と口を押さえ、こみ上げてくる吐き気のようなものをこらえるだけで精いっぱいだった。







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