前戯-3
▽
「おじさん、あたしの前に立って」ベッドの端に座った真雪が言った。
「え?」
「それからその下着を脱いで」
「そ、それはちょっと、なかなか恥ずかしいぞ」
「板東はね、自分でパンツ焦って脱いで、あたしをこうしてベッドに座らせて、無理矢理咥えさせたんだよ」
「そうなんだ」
「でも、口に突っ込まれたあたしは、それを手で持って、自分で口を動かして刺激してた」
ケンジは悲しそうな目で真雪を見た。「どうしてそんな気になったんだ?」
「条件反射、かな。結局その時も『もうどうなってもいい』って思ってたからね。自分は全然気持ち良くもなかったし、頭がくらくらしてて、やってることもよく解ってなかったんだ」
「そうか……」
「そして板東はあっさりあたしの口の中に出した」
「え? の、飲んだのか? それ」
「ううん。飲まない。その時はちょっとだけ理性が働いたんだよね、きっと。中に出されたものは、全部吐き出した。とっても気持ち悪い、って思った。食べた物も戻しそうになったよ」
「気持ち悪いよな、そりゃあ」ケンジは大きくうなずいた。
「親しくもない人、好きでもない人のものってだけで、強烈な拒絶感があった。だから酔ってて、頭がぼーっとしてても吐き出せたんだろうね」
「良かったな、真雪……」ケンジは独り言のように言った。
「だから、家に帰ってからあたし、龍にお願いして口の中に出してもらった。そしてそれを全部飲ませてもらったよ」
「龍の出したものは気持ち悪いって思わなかったんだな?」
「全然別ものだよ。感触も、味も、温かさも全然別もの。その時はあたし、自分の心を正常化するための薬だ、って言って、嫌がる龍に出してもらったんだ」
「薬……か」
「それ以来、あたし龍のを口に入れるの、大好きになったんだけど、龍は全然やってくれない」
「俺もいやだな、口に出すのは」
「らしいね」真雪は前に立ったケンジを見上げて言った。「大丈夫、ケンジおじが出す前に口を離すよ」
ケンジはにわかにそわそわし始めた。「む、無理しなくてもいいぞ、真雪。イヤならく、咥えなくても……」
「なにおどおどしてるの? 気持ちいいんでしょ? フェラって」
「おまえに咥えてもらうのが、気が引けてるんだよ」
「大丈夫だってば。全然イヤじゃないから」
「出す前に離れろよ」
「わかってるってば」
「約束だぞ!」
「もう! おじさんしつこ過ぎ。出す瞬間に口を離すから、代わりにこの胸めがけて発射して」
「ううむ……。まあ、口に出さなくて済むのならそれぐらいは……。でもお前のその上質のおっぱいを汚すのも気が引けるな……」
「ありがと、褒めてくれて」真雪は笑ってケンジのショーツに手を掛けた。
「あっ、ま、真雪!」ケンジは慌てた。
「海棠家の男子って、ホントにシャイ」真雪はそう言って、飛び出したケンジのペニスをゆっくりと頬張った。
「ん、んんっ!」ケンジは苦しそうに呻いた。真雪は口を前後に動かし始めた。真雪の唾液と分泌されるケンジの液で、ペニスはぬるぬるになり、唇から幾筋も雫が垂れ落ちた。
「あ、ま、真雪……」ケンジはうっとりしたような声を上げながらも、険しい顔で目をぎゅっと閉じていた。
真雪が口を前後に動かす度に、流れ落ちる液がぴちゃぴちゃと音を立てた。
ケンジが身体を震わせ始めた。
「ま、真雪、真雪っ! も、もうイ、イくっ! 離せ! 口を離せっ!」ケンジが叫んで真雪の頭を両手で挟み込んだ。真雪は口からケンジの怒張したペニスを解放した。
ぐううっ!
ケンジが身体を硬直させて呻いた瞬間、真雪は再びケンジのペニスを喉の奥まで深く咥え込んだ。ケンジは驚いて目を見開いたが、すでに射精の反射は始まっていた。
真雪の口の中で。
びゅるるっ! びゅくっ! びゅくびゅくっ!
「あああああーっ! ま、真雪っ! だめだっ!」
真雪はケンジの腰に腕を回して締め付け、しっかりと口を固定していた。そしてケンジの放つ大量の熱いエキスを、喉を鳴らして飲み下していった。ケンジはそのまま観念したように最後の反射まで真雪の裏切り行為に身を任せるしかなかった。
「真雪っ! 何で約束を破った!」ケンジが大声で言った。
「約束通りでしょ? 出す前に一度、口、離したじゃない」
「誰がもう一度咥えてもいい、って言った!」
「だって、フェラ好きなんだもん、あたし。温かくて気持ちいいし」
「俺はおまえの口には出さない、って言っただろ!」
真雪は真っ赤になったケンジをベッドの横に座らせた。
「ごめんね、ケンジおじ。結果的に騙すことになっちゃって」
「勘弁してくれよ、真雪」
「でもさ、ああでも言って安心させないと、ケンジおじ、絶対あたしの口には出さなかったでしょ?」
「な、なんで出させる? しかもおまえ、出したモノ、吐き出さなかったじゃないか」
「だって、大好きな人の身体の中にあるものだもん。おいしかったよ。ごちそうさま」
「ごちそうさま、じゃないっ!」
「それにさ、あたしが今飲ませてもらったものって、龍がこの世に生まれる元になったものでしょ?」
「そ、そりゃそうだが……」
「大好きな龍を作ってくれたものを、あたし、自分の身体の中に取り込みたかったんだ。龍をもっと深く愛せるから」
「真雪ー……」ケンジは泣きそうな顔で真雪を見た。
「ごめんね、ケンジおじ。ありがとう。大丈夫。もうしないから」
ケンジは真雪をぎゅっと抱きしめた。