浴室-4
真雪は顔を上げて笑いながら言った。「洗ってあげようか?」
「え? い、いいよ」
真雪もバスタブを出た。
「だから、遠慮しないでよ、おじさん」
真雪はシャワーのノズルを手に取り、ケンジをチェアに座らせて肩から柔らかく湯をかけ始めた。そしてソープを手に取り、伯父の身体を優しく手で洗い始めた。
「な、なんだかフーゾクみたいだな……」
「あたしの身体で洗ってあげようか?」
「や、やめてくれっ!」
「フーゾクごっこ、やってみようよ」
「断る。かわいい姪にそんなこと、させられるかっ!」
「おじさんこそ、かわいいんだけど。反応が」
「うるさいっ!」ケンジは真雪からノズルを取り上げた。「真雪、後ろ向け。俺が洗ってやるから」
「もう、つまんないの」
真雪は言われたとおりにケンジに背を向けた。ケンジは真雪の身体を優しく洗い始めた。
「ああ、思い出すな」真雪がため息交じりに言った。
「何を?」
「あの実習の後、帰ってからあたし泣きながら龍に抱かれたんだけど、その後こんな風にいっしょにお風呂に入ったんだ」
「へえ」
「あの時の龍の手の感触に、とってもよく似てる。すっごく優しく洗ってくれたんだよ、あなたの息子」
「そりゃそうだろう。龍はおまえを赦そうと必死だっただろうからな」
「そうだね。ほんとにそうだった」真雪は目を閉じて、ケンジの温かでなめらかな手の感触を味わっていた。