ホテル-1
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ミカは出し抜けに、下着姿になっていた龍を突き飛ばし、ベッドに押し倒した。
「あっ!」龍は不意をつかれて慌てた。「ちょ、ちょっと、母さん! 乱暴しないでよ!」
ミカは息子をベッドに押さえつけたまま、彼の顔をのぞき込んで言った。
「龍、おまえさ、あたしが母親じゃなくて、もしこんなことになったら、どうしてた?」
「この年の差で?」
「そう」
「母さんが母親でない女性だったら、ってこと?」
「うん」
「何が言いたいの?」
「あたしをオンナとして抱きたくなるか、ってことだよ」
龍は腰をもぞもぞし始めた。
「その弾けた性格の女性が、こうして俺といっしょにホテルに入ってくれるか、ってことがまず疑問だけどさ」
「何だよ。おまえ弾けたオンナは苦手か?」
「いや、そういうこと言ってるわけじゃなくてさ、何て言うか、親子ほどの歳の差で、明らかにリードしたがりな女性が、俺に抱かれたくなるか、ってことの方が、俺、あんまり想像できないっていうか、んんっ!」いきなりミカは龍の唇を塞いだ。そして唇を押しつけながら彼の舌を吸い込み、自分の舌を絡ませた。
しばらくして口を離したミカは、龍の頬をぎゅっとつねって言った。「おまえ、理屈っぽいな」
「なんだよ」
「つまり何か? あたしみたいなオンナじゃ、セックスする気になれないっつーのか?」
「どうしてそうなるかな」龍は眉間に皺を寄せて言った。「そんなこと一言も言ってないじゃん」
「だっておまえ、さっきからあれこれ理由つけて、あたしを抱くこと拒否ってる風じゃないか」
龍は突然、上になったミカの背中に腕を回し、抱き寄せてごろりと横になった。そして今までとは反対に彼女の身体を押さえつけながら、そのつややかで肉厚の唇に吸い付き、舌で柔らかく舐め始めた。
「りゅ、」ミカが言葉を発しようとする度に龍はその口を塞ぎ、大きく交差させながら舌を吸い込んだ。そして背中に回した腕にさらに力を込めながら、自分の舌をミカの舌に絡ませた。ミカは小さく呻きながら自分の太ももを彼の股間に滑り込ませ、ゆっくりと彼の足と擦り合わせた。
口を離した龍が目の前の母親の顔を見つめた。「あなたは十分魅力的です」そして笑った。「母親であろうとなかろうと、こんな人が目の前にいたら俺は抱きたい」
「嬉しいね」
「シャワー、先にいいよ、母さん」
「いっしょに入るぞ。バスルームでもいろいろやりたいんだ、あたし」
「そう?」
二人はベッドから降りた。