ホテル-2
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落とされた琥珀色の照明が、ベッドを艶めかしく浮き上がらせている。その大きなベッドの真ん中に下着姿で横になった真雪は言った。
「あたし、あの夜、ホテルの部屋に入るとすぐ、こうしてシャワーも浴びずに、ベッドに横になったんだ。そしたらすぐに板東が挑んできた」
真雪に頼まれて自らも服を脱ぎ、下着だけの姿になったケンジは、ベッドの端に座って、仰向けになった真雪を見下ろしながら言った。
「どんな気分だった?」
「どきどきしてた。でもその時服を脱ぎ始めてた男を板東だって意識してなかった気がする」
「え? どういう意味だ?」
「結局さ、あたしがそんな風になったのって、カラダの癒しを求めてたってことじゃん。だから、別に相手が板東である必要はなかったってことなんだよ」
「ふむ……」ケンジは顎に手を当ててうなった。「それも酒のせいなんだろうな」
「たぶんね。その時単に都合良くあたしの近くにいて、そんな気になってる男が板東だった、ってこと。すっごく乱暴な言い方だし、龍にもとっても申し訳ないと思うけど、とにかくカラダの火照りを何とかしたかった、っていう状態だったね。お酒に酔ってて『もうどうなってもいい』って思ってた」
「そうだったんだ……」
「シャワー、浴びるね、ケンジおじ」真雪は身体を起こした。
「その夜を再現するのなら、そのままがいいんじゃないのか? 真雪。そいつはすぐおまえに手を出したんだろ?」
「え? だって、抵抗あるでしょ? 洗ってない身体を舐めたりするの」
「俺は平気だ。大丈夫」ケンジは真雪の身体をそっと抱いて、再び仰向けに横たえた。「で、最初に、どうされたんだ?」
「下着姿で覆い被さってきて、キス、そしてあたしのランジェリーを脱がせて大事な所を舐めたり指で刺激したり……」
「その時身につけてたのも、この黒のランジェリーだったのか?」ケンジは真雪の身体を眺めながら言った。
「うん。あれはもうへたっちゃったから捨てたけど、新しく買い直した。この日のために。ほとんど同じやつだよ」
「フロントホックじゃないか。板東を誘惑してるように見えるぞ」
「あいつもそう言ってた。でもこれは偶然。とっても嫌な偶然」真雪は小さなため息をついた後、微笑みながら言った。「おじさんもムラムラきちゃう? こんなの着てたら」
「そうだなー」ケンジは困ったように顎に手を当てた。「相手次第、ってとこかな」
「あたし、似合ってない?」
「いや、かなり似合ってると思うぞ。似合ってるというか、真雪が黒のランジェリーを身につける、ってかなり意外だし、その意外性が、普段から知ってる女性だけに興奮しちまう。おまけにフロントホックだし」
「ケンジおじ、抱いて」
ケンジは顔を赤らめて、早口で言った。「イヤならイヤ、ってちゃんと言うんだぞ、真雪」
真雪はくすっと笑った。「きっと最後まで言わないよ、イヤだなんて」
ケンジは柔らかく真雪の身体に自分の身体を覆い被せた。そしてゆっくりと抱きしめながら愛おしむように真雪の唇を舐め、吸った。真雪の身体はどんどん熱くなっていく。
んん……。真雪は小さく呻いた。ケンジはずっと優しく、時間をかけてその唇を愛した。
「もうとろけそう……ケンジおじのキスって絶品だよ。ほんとに心から癒される。それに、もうどんどん溢れてる。どうしよう……すごいよ」
ケンジは一度身を離し、にっこり笑って真雪の顔を見た後、彼女が身に着けていたブラを取り去り、ピンク色をした乳首を吸った。「ああん……」真雪は身体を仰け反らせた。ケンジはそのままその暖かく大きな手で二つのふくらみを包み込んでさすり、乳首を指で挟み込んで刺激した。
「あ、ああ、ケンジおじ、いい、いい気持ち……」
「知ってはいたけど、実際に見たり触ったりすると、おまえのバストって最高だな」
「そう?」
「ただ大きいだけじゃなくて、カタチもいいし、柔らかさも、肌触りも、弾力も申し分なしだ」
「マユミママ譲りなんだけどね。どう? ママと比べて」
「マユのバストも上級品だが、おまえのはさらに上を行くよ。しかし、」ケンジは少し照れたように赤面した。「おまえ、マユと同じ匂いがするんだな」
「そうなの? まあ、母娘だしね」
「なんだか、強烈に甦るよ。俺たちが若かった日々が」
「ケンジおじとマユミママって、二年半も付き合ってたんでしょ? 高校の時」
「そうだな」
「考えてみれば幸せな恋人同士だよね。いっつも一緒に暮らしていたわけだし」
「確かにな。俺たち、毎晩、チョコ食べて、コーヒー飲んで、ベッドで抱き合って眠ってた。実にワンパターンな日々だったな」ケンジは笑った。
真雪も笑った。「それってとっても贅沢で最高に幸せな日々じゃない。恋人同士なら」
「そうだな、幸せだよな。確かに」ケンジは昔を思い出すような目をした。