すべては必然に-9
「仕事から逃げて、それまで仕事が全てだったのに、仕事の全てがバカらしく思えた。
のんびり髭もそらず、ボーっと過ごす毎日で、ある日隣の女の帰りが
毎日遅い事に気づいたんだ」
「毎日遅くて毎日コンビニの弁当を引っ提げて帰ってくる。
気になって観察してみると本当に酔って帰ってきたことがないとなると
毎日残業だろう、と思った」
「数年前の俺自身を思い出して、この女、人生を無駄にしていると思って
始めは呆れていたんだけど、なぜだか食生活とか気になりだして」
「気がついた時には惚れてた。なんとかしてやりたいと思った。
せめて食事だけでもきちんとしたもの食って欲しいとい思った」
「俺と陽菜が今こうして話しているのは偶然じゃない。
俺がこうなりたかった。全て必然だ。俺が望んだからこうなった」
「大川さん」
「黙っていたことは謝るよ。今日だって半分は向こうが気づかなければいいと思った。
俺はまだ復帰する勇気がないのかもしれない」
「大川さん」
私はぎゅっと大川さんを抱きしめた。
「復帰は急がなくていいんだよ」