すべては必然に-7
「半田さん。お待たせしました。弊社の担当者です。
大きなお取引になると思いますので、私一人ではなく、
他にも担当を付けさせていただきます」
なんなの?
「再度確認をしたいのですが、あのブローチは大川氏の物で間違いはないですね?」
「・・・・はい」
「半田さんはあのブローチの意味をご存じで今日付けていらしたんですか?」
「・・・いいえ」
そこで5人の男たちは顔を見合わせた。
「知らないとなると、どこから交渉に入ったらいいのか・・・・」
「大川氏の事はどこまでご存知ですか?」
「・・・・全く知りません」
「そうです、か。では大川氏の事から少し話をいたしましょう」
そう前置きをして、ゆっくりと話しだした。
「大川氏は5年ほど前から頭角を出した新鋭のデザイナーです。
デザインと言っても洋服ではなく、商業デザイナーです。ロゴマークなどの・・・です。
3年前に、イタリアの世界的権威のある新人賞も受賞しています。
今現在で、日本人でその賞を受賞しているのは大川氏を入れて2人だけです。
その副賞がそのブローチです」
「新人賞・・・」
参加賞じゃないじゃない!
「その後なぜか、大川氏は引く手あまたの仕事を一切引き受けず
休業宣言をして業界から消えました」
消えた・・・・
「弊社は大川氏に仕事を依頼したくて何とか接触を試みましたが
居場所すらつかめていないのが現状です」
うん。電話持ってないしね。
「そこで交渉です」
「弊社の全社リフォームの話ですが。半田さんにお任せしましょう」
予定はないって30分前に言ったくせに・・・・
「その代わり、大川氏に仕事を引き受けてくださるように
説得していただけませんか?」