すべては必然に-6
カツカツカツと自分のハイヒールの音が怒りを表している。
必要以上の音をさせながら
マンションの廊下を歩く。
自分の部屋の隣の大川さんの部屋のチャイムを連打する。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン・・・
「はいはい。陽菜。チャイムが壊れる」
ムスッとした顔をして乱暴にハイヒールを脱ぐと
何も言わずにリビングまでずんずん入って行く。
そんな私を予想していたのか
大川さんは驚きもせず、困った顔をしてリビングまで着いてきた。
「陽菜・・・」
「これ!大事なものなんでしょう?お返しします」
今朝付けてもらったブローチを
ハンカチにくるんでバッグに入れてあった。
バッグから取り出してグッと大川さんの目の前に差し出すと
大川さんはそれを受け取ってハンカチを開いて中のモノを見た。
「役に立った?」
その言葉にカッとする。
全て!
全て計算内ってわけ?
朝、私のスーツに付けてくれたのは計算だったの?
「大川さん。きちんと説明してもらいましょうか!」
私の言葉に苦笑いをして
「もう、聞いてきたんじゃないの?」
と言う。
「聞いてきたわよ。全て!でも大川さんの口から聞きたいのよ!」
広告代理店の担当者に案内されて
大きな応接室に通された私は、そのまま30分ほど一人にされた。
忘れられてる?
なんて不安になった時、ぞろぞろと5人もの人が入ってきて
ゆっくりと交渉を始めた。