投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

鳳学院の秘密の最初へ 鳳学院の秘密 47 鳳学院の秘密 49 鳳学院の秘密の最後へ

第4章 会合-4

 組織の統制を見れば指導者の格が分かると言うものだが、現生徒会は九条会長の号令一下で動く、絶対的な組織であることが窺える。
 落ちぶれたとはいえ、さすがは名門九条家の出。優れたリーダーシップを如才なく発揮していると言うことかしら。礼儀作法にもそつがなく、紳士として完璧に振舞っている。
 「随分楽しげにお話していましたのに、お邪魔して申し訳ありませんわね」
 「とんでもない、貴方のご訪問に勝るものはございません。それに、話もちょうどひと段落したところでした」
 「まぁ、何を話していらっしゃったのかしら」
 「実は明後日が私の誕生日で、友人達を招いて、ささやかながらもパーティを企画しております。彼等とはその打ち合わせを少々‥」
 当たり障りのない会話から切り出してみたが、彼は慇懃な態度を崩さない。なるほど、これなら初対面の相手にも好印象を与えるだろう。
 しかし、私は見抜いていた。これまでさほど関心をもって接したことはなかったが、こうして一対一で向き合ってみれば誤魔化しはきかない。
 間違いない。この男は野心家だ。
 幼い頃より、数多の政治家、財界人と接してきた私は、人の本質を見抜く目を磨いてきた。それはお祖父様の英才教育の一環でもあったが、虚構の仮面をかぶり、真実の顔を隠して社交の場に現れる者を相手に、研鑽を重ねた賜物である。
 高い理想は口先だけで、実行力を持たない者。従順なのは上辺だけで、上役のポストを虎視眈々と狙う者。打算的な政治家に合理的な企業人。いずれ劣らぬ曲者の中から、真に才ある者を見出す能力が、綾小路家の人間には求められる。
 野心家であると言うことは、決して悪いことではない。目的意識も上昇志向もない者に、大業を成すことはできない。だが時としてそれは諸刃の剣となり、己の器量をわきまえず大望を抱いた者には、破滅が訪れる場合もある。もっとも、そのリスクを越えて偉業を成し遂げた者こそ、大物と呼ばれるにふさわしいのだが。
 彼の社交的な笑顔は作りものだ。その瞳の奥に潜む野心は、はたして彼にとって吉と出るか凶と出るか。
 だが今の問題は、この男が鳳学院の裏に潜む陰謀に、どう関与しているかである。当初は黒幕の従順な傀儡とも考えたが、今はそう思わない。野心を秘めたる獣が、誰かに飼いならされることなどありはしない。
 だとすると、彼は積極的に協力しているのだろうか。相手が西園寺であれ綾小路であれ、経営危うい九条コーポレーションを立て直すために、何らかの裏取引に応じたとも考えられる。特に医薬品販売が主産業の九条家が、大手病院グループを抱える西園寺家と結託することは想像に難くない。
 「まぁ、おめでとうございます。私からも祝辞を述べさせて頂きますわ」


鳳学院の秘密の最初へ 鳳学院の秘密 47 鳳学院の秘密 49 鳳学院の秘密の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前