第4章 会合-29
「それで、報道部の連中はこれからどうするつもりなんだ?」
項の辺りをぺちゃぺちゃ舐めながら、俺はすでに虜となった身体に尋ねる。この女を利用すれば、報道部を手中に収めるなど容易いことだ。
「‥んぁ‥、それは、‥んっ、‥あ、綾小路さんとのお話によって‥決まるかと‥」
早くも勝利を確信し、余裕を覚えて悶える身体を弄んでいたが、この思わぬ一言には凍りついた。
「何だと、それはどういうことだ!」
「えっ‥、あ、あの、昼休みの後、綾小路さんからお誘いがあったらしく、放課後喫茶店に伺うと仰られていましたけど‥」
放課後と言うことは今じゃないか!
「くそっ!」
抱えていた身体をソファに突き飛ばし、思わず立ち上がる。突然の解放に彼女は夢から覚めたような表情を浮かべるも、快楽の炎を灯された身体は容易に冷めやらず、妖しく身悶えする。だが、そんな媚態には目もくれず、俺は今の言葉が示す事実を噛みしめていた。
売春倶楽部の存在を知る報道部が紫織さんと接触を持ったなら、彼女にも情報が伝わったと考えるべきだろう。報道部が秘密にしておくことも、あるいは紫織さんが話を信じないことも考えられるが、楽観的に考えるのは愚の骨頂。ここは最悪の事態を想定しておくべきだ。
報道部だけならどうとでもなると思っていたが、紫織さん、いや綾小路家が介入して来るとなれば話は全く変わってくる。秘密保持には力を入れてきたつもりだが、現に売春倶楽部の話が漏れてるようでは、それも安心できると言い難い。ひとたび綾小路家の介入を許せば、計画が水泡に帰すことも考えられる。
ならば‥
その先を考え、武者震いを覚える。
昼休み、彼女に迫った時、あの怜悧な美貌が紅潮する様をどうして忘れられようか。万全を期すため、クリスマスまで待つつもりでいたが、もはや一刻を争う事態である。
‥いよいよ紫織さんを、俺のものにする時が来たようだ。
「‥ふ、ふふふ‥」
我知らず笑いが込み上げてくる。それは抑えようもなく狂的な奔流となり、口からほとばしり始めた。
「ははっ、は〜はっはっはっ!」
笑いながら俺は、手早くスラックスを下ろし、ソファでしどけない姿をさらす女の上に覆い被さった。この込み上げてくる強烈な衝動をぶつけるには、格好の生贄じゃないか。
乱暴に組み敷き、息がかかるぐらいに顔を近づけ、潤んだ瞳を覗き込む。
「いいか、お前はこれから裏切り者になるのだ。あの報道部の女どもを俺の前に跪かせろ」
一瞬、驚いたような表情が浮かび、鈍い瞳に理性の輝きが宿る。だがすぐに俺の言葉が心を蝕し、恍惚に蕩ける。陶然とした表情を浮かべて、口を吐いた言葉は、俺が望んだ通りのものだった。