第4章 会合-21
「あっ、でも、もしかして‥」
あたしは頭の中で、今聞いた生徒の情報を思い出す。鳳学院でゴシップを扱う以上、生徒の出自先を調べておくのは当然の下調べ。え〜と奈良崎君は参議院議員の長男で、ともちゃんは紅林音響の一人娘だったよね‥
「うん、間違いない、その風邪ひいてる子って、みんな政治家とか企業人の長男、長女ばっかりだわ」
あたしの指摘にしおりんも、はっとした様子を見せる。要するに狙われてるのは有力者の跡継ぎってことかな。でも、ともちゃんとは風邪ひいた後も普通に喋ってるけど、別におかしな様子なんてなかったけど‥
「あの〜、疑うわけじゃないんですけど、学院の体制に従順になるってどういうことですか。それって普通に丸くなったとか反省しただけとは考えられません?」
「残念ながらありえません。彼等は不自然なまでに従順な反応を示します。もっともそれ以外は普通と変わらないので、私も気がつかなかったのですが‥」
さっと血の気が引くのを覚え、あたしは再び瀬里奈と顔を合わせる。同じことを思い当たったらしく、瀬里奈の顔色も真っ青だった。
(ねぇ、新城先輩ってもしかして‥)
(‥ええ、ニューキャッスルグループ、ほらフィットネスクラブの。あの会社の長女よ。下に弟がいて、会社継ぐのはそっちらしいけど)
しおりんに聞こえないよう小声で話して確信した。新城先輩も洗脳されてるとすれば、ビデオに出てた理由も、瀬里奈に気付かれないよう嘘をつけたことも説明がつく。
どうやらあたし達が追ってる売春組織と、しおりんの探る陰謀の主は同じ黒幕につながってるみたいね。それで、そいつは有力者の跡取りを自分に従わせて、女の子には売春をさせてるってこと?
真相が見えてくるにつれ、あたしはだんだん腹が立ってきた。もちろんこんなことを企む奴は許せない。一体人をなんだと思ってるのよ!でも、それと同じくらいムカつくのが、そんな大事件に今まで気づかなかったあたしにだ。
こうなったら何としてでも正体を暴いて、明るみに曝してやるんだから。それができなくて、何がジャーナリストよ!
俄然ファイトが湧きあがってくるのを覚えるけど、それで事態の深刻さが分からなくなるほどあたしは馬鹿じゃなかった。何しろしおりんの話が正しければ、学院には洗脳された生徒がうじゃうじゃいることになる。それがどの程度の影響力を持っているかはわからないけど、あのビデオの新城先輩のように売春までさせられるんなら、何をしてきてもおかしくない。これは相当慎重に行動しなければならないわね。
それにしても、何が日本の将来を担う人材育成のための学院よ。もしかして鳳学院って、将来大物になりそうな生徒を集めて、洗脳してるんじゃないでしょうね。そうすれば自分達の思い通りに、政界も財界も操れて、日本を牛耳ることだってできちゃう‥って、あれ?