第4章 会合-2
「ちょっと、そこの二年!」
咎めるような声にあたしはびっくり。見れば通りすがりの女子が厳しい顔でこっちを睨んでる。あら〜、ちょっとふざけ過ぎたかな。
「ここは三年の教室だよ、二年生が何遊んで‥い‥」
彼女が最後まで言葉を続けれなかったのは、心強い用心棒のおかげ。こういう時の瀬里奈って、ほんと頼もしいわ。あたしと身長がそんなに変わらない女子の先輩は、怖い顔した瀬里奈に見下ろされ、文字通り言葉を失った。お気の毒さま。
わざとらしい作り笑顔を浮かべ、その先輩に綾小路元会長の行方を尋ねてみると、まだ食堂から戻ってきてない、と小さな声が返ってきた。これでここの用は済んだわ。おざなりに礼を述べ、瀬里奈を引っ張って、さっさとその場を後にする。おっぱい好きの先輩には一瞥もくれてやらなかった。
「ちょっと、いつもあんな感じなんじゃないでしょうね?」
廊下の角を曲がったところで、瀬里奈がドンと小突いてくる。イタタ、ちょっとは手加減してよ。
「まさか、いつもはちゃんと礼儀正しくインタビューしてるわよ」
「じゃあさっきのあれは何よ」
「だって〜、あの先輩、瀬里奈のスイカばっかり見てるんだも〜ん」
どうやら皮肉が通じなかったようで、瀬里奈は訳がわかんないって顔をする。彼女は気付いてないだろうけど、あたし達の身長差だと、ちょうど目線の高さに夏服のベストを大きく押し上げた、巨大な果実がくるのよね。しかも信じられる?あれ、歩くたびに揺れるのよ。
胸元をじ〜っと見つめる視線に、ようやく意味を察したみたいで、声をひそめて文句を返してくる。
「あんたねぇ‥、私の胸をなんだと思ってるのよ」
「だからスイカ」
「あんたも十分大きいでしょうが、大体小柄な分だけそっちの方がグラマーでしょ」
ちなみにあたし、身長は百五十二しかないけど、バストは八十四のDカップ。スタイルに自信はなくもないが、瀬里奈ったら身長は百七十六でバストはなんと九十のFカップ。高二でこれって反則じゃない?
あ〜あ、理想を言うなら後十センチ、ううん、贅沢は言わない、後五センチ身長が欲しいな。まだ成長期なんだから、急に伸びたりしないかな。
とは言え、あたしは自分の魅力を十分心得ている。このフランス人の容姿が人目をひくことも、背の低さと顔立ちから可愛い方に部類されることも。あと、瀬里奈と比べたりしなければ、体つきがグラマーってこともね。
今だって、すれ違う三年生の、主に男子は、あたし達を見て振り返る。二年生の教室付近では慣れられたけど、小柄で可愛い金髪のあたしと、モデル並みにスタイルの良い瀬里奈のコンビは人目をひくのだ。