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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第4章 会合-19

 それにしても羨ましいわ、ああやって自分の感情を余すところなくさらけ出せるって。
 感情的になるのを悪しとし、幼い頃から常に冷静であることを求められてきた私に、あのような振る舞いは許されない。でも、もし普通の家に生まれついて、彼女みたいに自由に笑ったり泣いたりができたら、どんなに人生が楽しいでしょう。いえ、せめて彼女に様な友達がいるだけでも、きっと毎日が面白いでしょうね。
 しかし私が普通を夢見ることは危険を伴う。現に今日はそこをつけこまれて、九条家の者の前で醜態をさらしたばかり。今ある立場は、どうあっても変わることはない。
 せめて友情を深めあう二人の邪魔をしたくなくて、私はそっと席を外す。カウンター席でしばらく様子を窺いながら、この調査に危険が伴うなら、あの二人を巻き込まないようにするべきかと考え始めていた。
 だが転がり出した運命は、容易なことでは止まらない。やがて落ち着きを取り戻した橘沙羅が、話しあいの再開を求めてきたので、私は応ずることにした。


 扉の前で佇む彼女は、穏やかな気持ちにさせてくれると生徒の間でも人気の微笑みを湛え、こちらへとやってくる。
 その優しげな表情とは裏腹に、大人の色香を放つ身体は、歩くたびに地味な紺のスーツの下から自己主張して来る。ジャケットを大きく盛り上げるバストに、タイトスカートを張りつめさせたヒップ。十代の娘にはない色香を振りまき傍らまで来ると、愛しげに背中から手を回し、そっと顔を近づけてくる。
 「フフ‥いけませんね、学院の教師ともあろうが、生徒と唇を重ねるなんて」
 熱いキスを交わした後、俺は学院きっての美人教師を、揶揄するように咎める。蕩けるような表情を浮かべた桜井先生は、慎ましげに眼を伏せる。
 「直哉様、貴方は未来の日本を治める尊いお方、女性を足蹴にするなど似あいませんわ」
 まるで子供を諭すような言い方は気に入らないが、そこには心底俺を案じる響きが込められていた。それで許す気になったわけでもないが、正直踏みつけているのも煩わしくなってきたので、女共から足を下ろす。そのまま身振りで退くように示すと、二人は文句一つこぼさず命令に従う。
 「それで一体何の用ですか、こいつらの失態で、私も忙しいんですよ」
 まるで校内で話す時のように、私と言う一人称を使うのは、先生に対する礼儀と言えよう。もっとも、学院では教育熱心な美人教師も、ここでは俺の下僕と化す。命ずれば足元に跪きもするし、肌をさらして身体を開くことも厭わない。
 そう言えば、最近この身体ともご無沙汰だったが、久しぶりに堪能するのも悪くないな。スーツの下で息づく柔らかな肌の感触を思い出し、欲望が込み上げてくる。このイライラした気分を鎮めるために、一つ腰を使った運動でストレスを発散させるのもいいではないか。
 だが、胸元へ伸ばしかけた手は、思わぬ言葉で止まることとなった。


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