第4章 会合-15
「はい、直哉様の素晴らしい人となりを褒め、わたくしの行いが間違っていたことを‥きゃあっ!」
皆まで聞かず、俺は伊集院の頭を踏みつける。怒りのまま体重をかけ、絨毯に顔を押し付ける。
「この馬鹿女っ、そんなことを言えば怪しまれるに決まってるだろうが!」
「‥で、ですがわたくしは直哉様の‥」
「黙れ、伊集院の分際で、俺に口答えするな!」
「も‥、申し訳ありません、わたくしめの落ち度にございます」
まったく、少しは頭を使いやがれ。馬鹿女のどじのせいで、紫織さんにいらぬ疑いを持たれたじゃないか。週末、さんざん俺への無礼を懲らしめ、隷属することを身体に教え込んでやったと言うのに、まだ分かってないらしい。
とにかく紫織さんの訪問はこいつが原因のようだ。ひたすら平身低頭する伊集院を容赦なく踏みつけたまま、もう一つの問題に目を向ける。
「早紀、お前もだ、こっちに来い」
役員席で作業をしていた桐生早紀も、俺の前に来るや、伊集院同様跪く。校内では同じ生徒会執行部の副会長として肩を並べて歩く立場の女だが、ひとたび我が城に戻れば、こいつも下僕の一人に過ぎない。
「売春倶楽部の機密管理はお前に任せていたはずだぞ。一体報道部はどうやって嗅ぎつけたんだ?」
「申し訳ありません直哉様、私の失態にございます。不測の事態により情報漏洩が起きたことをお詫びします」
俺はもう一方の足で早紀の頭を踏みつけ、容赦なく床に押し付ける。抵抗するでなく、彼女は押しつけられるままになるが、それでも腹の虫は収まらない。こいつはそれなりに評価していたつもりだが、肝心なところでミスを犯したな。
「らしくない失態だな、早紀。どう責任を取るつもりだ?」
「‥うっ、直哉様のお気の済むよう、‥いかようにもご処罰くださいませ」
反抗の気配もなく、副会長は潔いともとれる態度を見せる。まったく気に入らねえ、ベッドの中ではひぃひぃ悶えるくせに、どうして服を着てる時は、こうも小生意気なんだろう。
「くそっ、お前達、罰は覚悟しとけよ」
まったく部下が無能だと上の者は苦労をさせられる。憤懣やるかたない思いで足下の女どもを見下ろすが、こいつらの処遇は後回しだ。
早紀の失態のせいで報道部は完全にこちらを怪しいと睨んできてるし、悪くすれば紫織さんにも疑いをもたれたかもしれない。早急に報道部に対しては処置を取らねばなるまい。だが奴らはどこまで、倶楽部の実態を掴んでいるんだ?
いや、そんなことより、問題は紫織さんだ。彼女こそは計画の最重要人物。他の何を差し置いても、彼女のことだけは失敗するわけにいかない。万全を期すまで待つつもりでいたが、これは計画の前倒しも考慮に入れねばなるまいな。