母の心残り-3
『よかったわ、信じてくれて。で、何の話してたっけ?』
「え〜っと、え〜っと…」
お満は軽い頭を振り絞った。
「あっ、そだ。『ちょっとくらい弄っても』って仰ました。母上、それって…」
堅物だった母親の発した言葉とは思えなかったので、お満は上目づかいで窺うように聞いた。
『そ、それは…』
返答に困ったお敏は言葉を詰まらせた。しかし、それを言わないと、折角天界に頼み込んで下界に来た意味がない。お敏は勇気を振り絞って話始めた。
『お満、そなたから見て母はどんな風に見えていた?』
「え〜とね。凄く厳しかったよ。それにね凄く生真面目だったよ。お早世叔母様みたいにもっと面白かったらいいなあって思ってたよ」
折角の機会なのでお満は正直に答えた。
『や、やはりか…』
娘の正直な答えにお敏はガックリ肩を落とした。
「母上、どうなされたのですか?」
頭の軽いキラキラした目で見つめられたお敏は決心をした。
『お、お満、正直に申します。は、母は逝ったことがありませぬ…』
真っ赤になったお敏は生娘のようにモジモジしながら言った。
「へっ?それって身罷られることではなく、『逝く逝く逝く〜』の方でございまするか?」
『そ、そうです。母の真面目な性格が枷となり、極力そのようになることを回避しておりました。姉のお早世の奔放さも仇になっておりまする』
「まじ〜〜〜!メチャ気持ちいいのに、勿体なああい」
お満はさっき経験した高みを思い出して信じられない気持でお敏を見た。
『そ、そうなのです。今思うと凄く勿体ないことをしました。母もお早世のようにしておれば…』
天界に行ってから親族の様子を見守る事がある。そんな中でお早世のやりまくる姿を見る内に、お敏は毎晩求める棒太郎を、床の中で足蹴にしていた事を後悔していた。
『それで、お満が逝くのを見て、居ても立っても居られずに、そなたの元に参ったのです』
「えっ?でも来ても仕方がないじゃん。だって今の母上には女子の一番気持ちの良い部分が無いではありませぬか。お満が擦って差し上げようとしてもそれは叶いませぬよ」
霧で霞む下半身の無いお敏の体を指刺してお満が言った。
『言うなお満』
お敏は顔を伏せてよよと泣いたが、それも一瞬の事、お敏は直ぐに顔を上げた。
『それでお満に少し頼みがあるのです』
お敏は今まで以上にモジモジしながら言った。
「何でございましょう?」
『あ、あのね、あのね、お満が今度弄る時にね、ちょっとお満の体に取り憑きたいなあって。あのね、そのね、そしたらね、母も一緒に『逝く逝く逝く〜』ってなるかなあって。あっ、あっ、取り憑くって言っても障りは無いのよ。痩せたり太ったり寿命が縮んだりはないのよ………ダメ?』
一気に捲し立てたお敏にお満は唖然となった。そして軽い頭で考えて聞いた。
「へっ?で、ではお満がおまんこを弄っても叱らないのですか」
『やだあ、そんな破廉恥な言葉を露骨に言わないで、キャー』