蚕-1
「遣らず」
凪がれていく約束は
みるみるうちに取るに足らなく
君は忙しくも
なだらかに声を落としていく
その無邪気な素振りは
処世ともつくようで
僕はどうすることも出来ず
つい謝ってみている
…惜しむらくは只、
ひたすらな君の掌
「隔絶の少女」
意識の淵から
足を崩す一瞬に
脳裏を掠める
空白の少女
その泣き声は
戯れのように
消えては消えず
或いは
目覚めの空虚さでさえ
あったのかもしれない
「遠い裾」
削がれた輪郭に
後ろ姿が見慣れなくなっていて
もう探るまでもなく
充分に高い筈の君の背を
眺める位置はまた変わりつつある
それでも尚
甘ったるい私は
歪みを隠して
絶句のように小さく笑うのだろうか