第3章 調査-14
今落ち着こうと言ったばかりの瀬里奈が憤慨するも、あたしにはわかる、紫苑は大まじめに言ってるのだ。まぁ、さすがに宇宙人はないにしても‥
「大体、操られたにしたってエッチなんてしたら、いくらなんでも気付くわよ。あれ初めての時はすっごく痛いんだから‥」
そこまでしゃべって瀬里奈は、はっと気づいたように口を噤むが、もう遅い。あたしはその言葉が示す事実に、宇宙人に会うよりびっくりした。
「‥ちょ、ちょい待ち、瀬里奈、今なんて!?」
「ももも、もしかして瀬里奈さんって、処女じゃないんですか!」
返事は聞くまでもなく、顔を真っ赤に染めた瀬里奈は、白々しく目を逸らす。
な、なんですと〜!
「ちょっと聞いてないわよ、いつ、どこで、誰とやったのよ!」
「な、何でそんなことあんたたちに言わなきゃならないのよ!」
「そ、それで、あの、初めての時って血が出るって本当なのでしょうか」
「もうっ、今それどころじゃないでしょ!」
そうは言っても、思いもよらぬビッグニュースにあたしはショックを隠せなかった。あの、男なんて興味ないって感じの瀬里奈が、既に経験済みなんて。それもあたしより先に!?
「‥わかったわよ、中学で部活辞めた後、ちょっと荒れれてさ。で、その時優しくしてくれた人がいて、つい‥」
「ガ〜ン、何か瀬里奈に裏切られた気分」
「本当ですわ、瀬里奈さんが非処女なんてショックです‥」
本当に驚き半分、ショック半分で、あたしは今までと違った目で彼女を見てしまう。いつも一緒にいるから気付きにくいけど、やっぱり男の子の目から見ると、大柄で巨乳の瀬里奈は、エッチの対象に見えるんだろうか。どんな相手だか知らないけど、ベッドで裸の男の人と抱き合って、ビデオで見た先輩みたいに、喘ぎ声を上げたり‥
なんだか顔が赤らむのを覚え、慌てていけない妄想を頭から追い出す。でも、今まで男がいる気配なんて全然なかったけどなぁ。
「‥で、何、その彼とは今も続いてるわけ?」
「学院入る前に別れたよ、も〜、いいでしょ、この話は」
「そんな、どうして別れたのですか、やっぱり相性とかってあるのでしょうか」
「‥私が藤堂になったせいよ、これ以上は言いたくない」
憮然とした表情を浮かべ、瀬里奈はそっぽを向いてしまう。さすがに家関係の話になると、これ以上は突っ込めなくなる。決して喜んで認知されたわけじゃない瀬里奈は、藤堂と言う性を好ましく思ってない。だからあたしたちも、部活では名前で呼び合うようにしてるのだ。
さっきまでとは全然別の気まずい沈黙が訪れ、どうにも話が継ぎにくい。なんだか今までとは違った目で瀬里奈を見てしまうので、微妙な緊張感が漂っている。やっぱりこれは、彼女が友達から大人の女性に変わったせいかな。