第3章 調査-12
「問題は撮影場所ね。これがどこかはわからないけど、寮の部屋じゃないことは確かでしょ。でもそうなると、学院内に秘密のスタジオがあるってことになるし、そんな部屋を確保するとしたら、相当権限のある人じゃないと無理よね」
「だったらあからさまに生徒会が怪しいじゃない。そのDVDだって、生徒会の資料庫から出てきたんでしょ」
「待ってください、教職員と言うことも考えられますわ」
「そうね、学院関係者もありうる。でも今の時点で一番怪しいのは生徒会、それも‥」
その先を続けるのをあたしは躊躇った。だって、もしこの推測が当たっていたら、とんでもない相手を敵に回すことになる。同じ結論に至った二人も暗い表情。瀬里奈が口火を切るまで、長い沈黙が続いた。
「‥そうだね、綾小路の女狐なら、何でもやれそうな気がするね」
「そんな、綾小路さんは、そんなことをする方じゃありませんわ!」
「何でそんなこと言いきれるの、紫苑、あんたあの女と友達かい?」
「いえ、親しいと言う程ではありませんが、蒼月流の展覧会でお話する機会がありました。とてもお優しく、誇り高い方でしたわ」
正直言えば、あたしもあの綾小路紫織が、裏で売春を斡旋してるとは思わない。でもこのビデオを見てからと言うもの信じがたいことばかりで、一番しっくりくる結論があるとすれば、絶大な権力と財力を誇る綾小路家が裏で手をひいているということだった。
「とにかく、綾小路生徒会を容疑から外すわけにはいかないわ。それにあたしは九条生徒会も怪しいと思うの」
「あんた、副会長は関係ないかも、って言ってなかった?」
「そうだけど、仮にこの売春組織を前生徒会が作ったとして、生徒会を引退したらそれでおしまいになると思う?」
「九条生徒会が売春組織を引き継いだってこと?」
「だって、前の選挙はどうみてもおかしかったでしょ。もし伊集院さんが売春組織の引き継ぎを断った結果だとしたら‥」
「いい加減にしてください、沙羅さんも瀬里奈さんも邪推のしすぎです。綾小路さんに限ってそんなことはありません!」
声を張り上げて紫苑が立ち上がるので、あたしはびっくりした。中学からの付き合いだけど、彼女のこんな大声を聞くのは初めて。
「ちょっと落ち着きな、どうせ推論なんていくら重ねても事実にはならないんだから。今は確実なことだけ確認していこ」
瀬里奈の言う通り、あたしも少し先走り過ぎたかも知れない。確かに状況証拠だけじゃ他にいくらでも仮説がたつし、教職員だって十分怪しい。あ〜っ、もう!何かもっとはっきりした証拠となるものが欲しいわ。
「それじゃ、あの、もう一つわからないことがあるんです」