幸せな夫婦-4
真雪の上にぐったりと身体を覆い被せたまま、まだ熱く激しい呼吸を繰り返している龍の汗ばんだ背中を、真雪は温かい手でそっと撫でた。
「ま、真雪……」
「龍、満足した?」
「俺、もうだめだ……強烈にやられちゃったよ、久しぶりに」
ふふっと笑って真雪は龍の身体を抱いた。「龍がイってる姿って、いつ見てもかわいいね」
「こいつめ」龍は微笑みながら真雪の額を小突いた。
「龍がいっぱい感じてくれると、あたしもとってもいい気持ちになれるよ」
「今日のは特にすごかったよ。消耗が激しすぎ」
真雪はくすくす笑った。
「何だよ……」
「だって、龍ったら、喘ぎながら『ごめんなさい』はないでしょ。おかしいよ」
「あのね、君には解らないだろうけど、イきたくてもイけない状態っていうのは、男にとって拷問だよ?」
「そうなの?」
「もう、謝らずにはいられないんだ」
「そんなに?」真雪は少し申し訳なさそうな顔をした。「じゃあ、あんまりやんない方がいいのかな、あのワザ……」
「いや、やってほしい」龍は真剣な顔で言った。「すっごくいいんだ、その拷問感が。もう最高だよ」
真雪は噴き出した。
「あははは! 龍ったら、M男だったんだね」
「いやいや、M男じゃなくても、あれは絶対病みつきになる」
「そう?」
「真雪のあの強烈技にかかったら、どんなオトコでもイチコロだよ」
「残念でした。他のオトコになんか、このワザは使ったりしません」
真雪は龍にキスをした。
息を整えながら、ベッドの横に立ってコンドームの後始末をしている龍の背中に向かって、真雪は小さな声を投げた。「ごめんね、龍」
龍は頭を真雪に振り向かせた。「え? 何が?」
「面倒でしょ、それ、着けたり外したりするの」
「全然平気。もう慣れた。13年間続けてるから」龍は笑いながらベッドの端に腰掛けた。
「今日もいっぱいだね。すっごく膨らんでる」真雪はおかしそうに言った。
「だって、特に強烈だったんだもの、今夜の真雪」
「それだけいっぱい出すっていうのが、龍の特技の一つだよね」
龍は口を結んだそのゴムの袋を持ち上げて言った。「こんだけの量を君の口の中に出すってことだよ? 俺が口内発射をいやがる気持ち、わかるだろ?」
「全然。かえって嬉しいよ。ごくごくいつまでも飲んでいられるじゃない」
「やめてっ!」龍は豪快に赤面した。「なんだよ『ごくごく』って……」
真雪は身体を起こして龍を背中からそっと抱きしめ、それから手を伸ばして彼の太股を優しく撫でた。
「あたし、龍と結婚できて、本当に良かった……」
「どうしたの? 急に」
「だって、龍といる時は、いつもずっと幸せだもん」
「照れるよ。今さらそんなこと言われたら……」
龍は真雪の身体をそっと抱いてベッドに寝かせ、自分もその横に寄り添った。
「ずっといてね、あたしの中に」
「いるよ。もちろん」
龍は身体を横に向けて真雪を抱いた。
「幸せ……」
真雪はそのまま静かに寝息を立て始めた。
龍もその真雪の愛らしい呼吸音を聞きながら眠りに落ちていった。