〈終着点〉-2
「や、やめろぉ!!優愛から離れろよぉ!!」
「嫌よ!!嫌あぁぁ!!!」
「キャアァァッ!!」
サロトが部屋に入ると、興奮状態のタムルが檻に飛び乗り、囚われの牝達をジロジロと見ていた。
景子や春奈達は衣服の乱れもなく、静香だけが全裸のままにされている。
どれもこれも、実に美味そうな牝達だ。
ついに対面となった異常者に、奈和と優愛は怯え、景子は優愛を守ろうと必死に叫んでいた。
そこから少し離れた場所に置かれていた静香もまた、歯をガチガチと鳴らして小さく踞っていた。
『わ、ワシの花嫁じゃあッ!!』
「!!!」
サロトはモニターの隣に置かれた檻の中に、待望の花嫁を見つけた。
黒いスーツを纏い、開脚して収まる春奈は、サロトの想像以上に魅力的だった。
『ムフッ!ムフッ!可愛い……ムフフッ!実に可愛いではないか!!』
檻にしがみつき、涎を垂らして見詰めてくるサロトを春奈は睨んだ。
この知能が低そうな稚児の如くはしゃぐオヤジが、数々の女性を拉致した犯罪の首謀者なのだから。
「……美津紀を帰して……」
春奈が某国の言語で凄むと、サロトは鼻の下を伸ばして目を剥き、専務に顔を向けた。
『なんと……ワシの言葉が解るとはな?これはお利口さんな花嫁じゃないか』
『私も驚きましたよ。でも、これなら楽しくて円滑な“生活”が送れそうですねぇ』
春奈が某国の言語を理解出来る事は、サロトには願ったり叶ったりだ。
これならタムルのように言葉で責める事も出来るし、アレコレと卑猥な命令も楽しめる。
伸ばした鼻の下は、あまりの嬉しさに吹き出しそうになったのを堪えた為だった。
『フン!「美津紀を帰して」だと?お前なんかに何が出来るんだよぉ?』
専務は春奈の傍にしゃがみ、唇を尖らせて春奈を真似た。
『どうにか出来るか……俺に見せてみろよぉッ!!』
「私は貴方達になんかぁッ……ぶ…むぐ……」
『優しくな、優しく扱うんじゃ。ほうほう……よく眠ったようじゃなあ?』
専務が握った薬の染み込んだタオルが、春奈の顔面を完全に覆うと、程無くしてガックリと頭を下げた。
サロトの部下達は床に毛布を敷き、簀巻きにする準備を始めた。
檻は横に倒され、拘束していた麻縄が解かれる。
サロトは待ちきれないとばかりに檻を掴むと、扉となる鉄柵を開けて、春奈の手錠を握って檻から引き摺り出した。