お城にて-1
「腕組んで、歩けるなんて、信じられな〜い!
だって、ずうっと、デートしたいって思ってたんだも〜んっ!」
綾子は、42歳の某私立女子校の教師。
美人なのに何故か独身である。
ちょっと、ぶっ飛び感があるのは、否めないが・・・。
今夜は、行きつけの飲み屋の若い衆が独立して新規開店のお祝いがあった。
その帰り途である。
行きつけの飲み屋では、たまに隣に座ることがあった。
良く飲み、良く食べる。
からからと良く笑う人でもあった。
話題も豊富で、一緒に飲んでいて飽きる事がなかった。
ただ、帰るタイミングがなかなか合わず、その後どうということも無かった。
胸が強烈に大きい。
100センチは、超えていそうなバストである。
太っている訳では無く、顔も小さいのであるが、胸だけはとにかくでかい。
男なら、誰でもその大きな胸に視線が釘付けになる。
あまりに大きく、胸をカウンターの上に載せていることもある。
お祝いは賑やかであった。
たくさんのお客さんが集まり、大将も駆け付け、弟子の独立のお祝いを楽しく盛り上げた。
好い加減、飲み疲れて、一足早くお店を退散したところで綾子が追いかけてきた。
「もう一件、飲みに行きません?」
かなり賑やかな繁華街ではあるが、この街にはあまり縁が無く、何処に行けば良いのか、皆目見当も付かなかった。
「腕組んでいいですか?」
綾子から言ってきた。
嫌な訳が無い・・・。
大きな胸が私の左腕にグイグイ食い込んでくる。
「どこか、知っているお店ありますか? 私、この街のこと、全然知らないんです。」
素直にそう言ったら、
「私も全然、わからないから、歩いて適当に入りましょう!」
あっけらかんとした人である。
駅とは、反対の方向に歩いていると、大きなお城みたいな建物が出て来た。
「すごい建物だなぁ! これ何?」
「何かしら、入ってみましょうよ!」
ラブホテルである・・・。
「ありゃ、これはまずいですね。」
引き返そうとすると、「いいから、いいから、入りましょう!」
強引に腕を引っ張られて中に引きずりこまれた。
普通と展開が全く逆である。
「まいったなぁ・・・。」と思っていると、綾子はさっさと、部屋のボタンを押して、私の腕をぐいぐい引っ張ってエレベーターに乗り込んだ。
「嫌でした?」
綾子がやんわり訊いてきた。
「いや、嫌な事はないんですが・・・。」
それ以上、言葉が出てこなかった。
部屋に入って、さすがにこういう展開は初めてなので、どうしていいのかわからず、うつむき加減に部屋の中をキョロキョロしていると、綾子が正面から腰に手を回してきた。
「強引過ぎました?」
「はぁ・・・・。」
「シャワーを浴びましょう!」
そう云って、私の上着を脱がせようとしたので、
「あ、ありがとうございます。 自分で脱ぎます。」
本当に強引な人である。