嫉妬......-1
「よし!今日はつき合って!笑美ちゃん!」
美菜お姉ちゃんは立ち上がって、泣いている私の手を引っ張った。
「えっ?どこに?」
「いいから!」
そう言って美菜お姉ちゃんはカラオケに私を連れて行ってくれた。美菜お姉ちゃんが番号を入れるとノリのいい音楽が流れてきた。
「葛城君のバカヤロー!」
美菜お姉ちゃんはマイクを掴むといきなり叫んだ。
「私を選ばないなんて絶対後悔するぞ!」
呆気にとられている私に
「笑美ちゃんもどう?」
美菜お姉ちゃんは私にマイクをすすめてきた。私はマイクを受け取って
「純兄ちゃんのバカヤロー!」
そう叫んでいた。
「そうだ!葛城君のバカヤロー!」
「私のほうが先に好きになっていたんだぞ!」
「あんな女のどこがいいんだ!私のほうが純兄ちゃんを幸せに出来るぞ!」
「そうだ!絶対後悔するぞ!」
私達はずっと叫んでいた。
「あれ?笑美と美菜ちゃん?二人共泣いていたような....」
仕事からの帰り道、偶然二人を見かけた。
「あれ?梓さん?」
声をかけられた方を見ると純君と亜梨紗が立っていた。
「亜梨紗とつき合う事にしたんだな!」
「はい....梓さんに言われたように自分に素直になる事にしました....」
「そうか....良かったね亜梨紗!」
「っ......」
亜梨紗は真っ赤になって照れていた。
「それじゃ邪魔者はここで消えるよ!亜梨紗!気をつけろ!男はみんなスケベだからな!」
「えっ!」
「梓さん!」
「ハハハ....じゃぁな!」
私は純君達から離れて笑美達を探した。笑美達はカラオケボックスに入って行った。二人の後を追いかけて入って行くと
「バカヤロー!」
美菜ちゃんの叫び声が聞こえた。
「やっぱり見てしまったんだな......」
私は二人に詫びた。
「ゴメンね....私が背中を押したから....二人に辛い思いさせたね....」
「少しは気分が晴れた?」
美菜お姉ちゃんが聞いてきた。
「うん....少しだけ....美菜お姉ちゃんは?」
「私も....少しだけ....かな」
二人して浮かない顔でカラオケボックスを出ると梓さんが立っていた。
「ん?どうしたんだ?浮かない顔して?失恋でもしたのか?」
「っ......」
「あちゃぁ....図星かよ....仕方ない!今日は特別だぞ!ついて来い!」
お姉ちゃんは途中のコンビニで缶チューハイを買って私達を香澄さんのマンションに連れて行った。
「梓!また失恋したのか?」
香澄さんが呆れた顔で迎えてくれた。
「またとはなんだよ!でも今日は私じゃない....こっちだ!」
お姉ちゃんは私達を指差した。
「えっ?こっちって?まさか!」
「うん....悪いけど今日は頼むよ!」
「仕方ないな....入れ!」
香澄さんは私達を部屋に入れてくれた。
「今日は特別だぞ!」
お姉ちゃんは私と美菜お姉ちゃんに缶チューハイを差し出した。
「まだ未成年だから一本だけだぞ!」
「うん....」
「あと....一気飲みもダメだからな!」
「うん....」
私は一口だけ飲んでみた......初めて飲むお酒は複雑な味がした......