嫉妬......-12
「誰も得しないなんて事はない!私達が楽しめる!なぁ紗弥香?」
「そうだよ!香澄の言う通りだよ!吐いて楽になりな!」
(何言ってるんだ!相手の名前を聞いて一番困るのは紗弥香なんだぞ!)
「仕方ない....紗弥香!梓を押さえろ!」
香澄の命令で紗弥香が私を押さえた。香澄が不気味な笑みを浮かべて近づいてきた。
「か..香澄....何を?」
「こんな手を使いたくなかったんだが....仕方ない....」
そう言って私の脇腹をくすぐり始めた。
「か....香澄....ヤメて....」
「ヤメて欲しいなら吐け!」
「ダメ....それだけは....」
「だったら私も許さない!」
私は香澄の攻撃に頭がおかしくなりそうだった....
(ゴメン......純君.......)
「わかった....言うから......言うからヤメて!」
「最初から素直になっていればこんなメにあわずに済んだのに....手間をかけさせやがって......で..誰なんだ?」
「その前に約束してくれ!絶対に誰にも言わないって!」
「ああ......」
私の迫力に香澄が気後れしたみたいだった。
(この事は亜梨紗には絶対に知られてはいけないんだ......あの笑顔を見てしまったら......余計に......)
「........だよ......」
「えっ?」
「......君だよ......」
「えっ?」
「純君だよ!」
「....梓....まさか....純君って.....」
香澄の顔が青ざめていった....そして紗弥香も.....
「お前の下に住んでいる......あいつか?」
香澄が恐る恐る聞いてきた。私が頷くと
「お前!自分が何したのかわかってるのか!」
香澄が掴みかかってきた。
「だから言いたくなかったんだ....」
「言いたくなかったってな!」
「知らなかったんだよ!あいつと亜梨紗が....」
「いつ?いつ純君と?」
紗弥香が聞いてきた。
「先月......」
「それなら....亜梨紗とつき合う前か....」
紗弥香が漏らした。
「いくらつき合う前だからって納得出来るか?」
そう言った香澄に
「だから言いたくなかったんだよ!言えなかったんだよ!」
その時、バシッとひっぱたく音が廊下から聞こえた。「本当か!梓さんの言った事!なんとか言えよ!純!」
亜梨紗の叫び声が聞こえ、それから壁に何かを打ちつける音が何度も聞こえた。
「亜梨紗!」
私達は慌てて廊下に出た。
私は怒りを抑える事が出来なかった。
「なんとか言えよ!純!なんとか言ってくれよ!」
私は何度も純の体を壁に打ちつけていた。
「ウソだよな!梓さんの言った事!ウソだって言ってくれよ!」
私は泣いているのにも気づかなかった......
「お前がウソだって言ってくれたら信じるから!お前の言う事なら全部信じるから!信じられるから!ウソだって言ってくれよ!頼むよ....頼むよ!純!」
純は何も言わなかった。
「なんで何も言ってくれないんだよ!お前が言ってくれるなら....例えカラスが白いって言われたって信じられるんだアタシは!だからウソだって言ってくれよ!」
純は私にされるがままだった....されるがままに体を壁に打ちつけられていた。
「なんでウソだって言えないんだよ!」
私は拳を握り締め純に殴りかかった。
「やめろ!」
香澄さんが私の腕を掴み叫んだ!
「離せ!離せ!離せよ!」
私は香澄さんの手を振り解こうとして暴れた。しかし香澄さんは手を離してくれなかった....
「亜梨紗!お前のその手はお前のピアノを聞いてくれる人を幸せにするためにあるんだろ!人を殴るためにあるんじゃないだろ!」
「でも!でも!でも!」
自分でも自分をコントロール出来なかった。