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蜘蛛娘と狸
【歴史 その他小説】

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前編-1

ある日、狸は娘の出す糸に絡め取られました。
吊られた狸は娘に哀願します。

「お嬢さま、命ばかりはお助けを」
「ほぅ、話す狸がまだおったか」
「里で暮らしておりましたので。化けることもできます」
「喰ってしまうには惜しい。私の使いになるか?」
「なります、なります」

こうして狸は蜘蛛娘のお供となりました。



「狸、そこで四角い枠になれ」
蜘蛛娘は木賃宿の寝所で狸に命じます。

「はい、お嬢さま。こうでしょうか?」
狸はどろん、と化けます。

「もう少し大きくな。二人、横になれるぐらいにな」
「はい」
そうして枠になった狸に、蜘蛛娘は糸を張り、行ってしまいます。

(このようにして虫を防ぐのか。お嬢さまは賢い方だ)
狸は待ち、そのまま寝入ってしまいました。

「ささ、こちらへ」
「あら、素敵な蚊帳だこと」
蜘蛛娘は、美しい女を連れて宿に帰ってきました。
蚊帳に入るのに、蜘蛛娘は苦もなく糸を操ります。

二人は裸で睦み合います。
「ふふ、女の子なのに女の体が好きなのね」
「うむ、たまらない」

蜘蛛娘は女の四肢を、手早く枠の糸に縛ります。
「あれ!このような!」
「可愛がってから喰ってやる」

蜘蛛娘は、身動きのできない女の身体をさんざんに弄びます。
蜘蛛娘は巧みに、長い舌を女の下腹に出し入れします。

「感じるがよい。良い精が出る」
「ひぐう」
「尻にも挿れてやろう」
「あっ、出る!」
「これ、狸。見るな」
「はい、お嬢さま」

後には糸をきつく巻かれ、
精を絞り取られた女の骸が残るのみでした。

(ああ、恐ろしい。あの様な姿にならなくて良かった)
狸は震え上がるのでした。



「おうおう、子供が山道をあぶねぇなぁ」
「狸を連れてやがる。笑えるぜ」
蜘蛛娘は、品の無い男たちに囲まれます。
狸はうろたえるばかりです。

「狸、来い」
蜘蛛娘は手早く狸を腰に縛ると、
糸を投げ、木立を伝ってまんまと男たちから逃げおおせました。

(あぁ、恐ろしかった。なぶり殺しにされていたかもしれない。
お嬢さまはすごいな。こんなこともできるのか)
狸は口を開けて驚きます。



山道を往くと、獣の鳴き声がします。
狸が罠にかかっています。
お供の狸は、廻りをうろうろするばかりです。

「あぁ、お嬢さま。哀れな狸にお助けを」
「良いが、この傷では助からぬやも知れぬぞ」
「構いませぬ。人に食われるよりましです」

手負いの狸は、只の狸だったので、
礼も言わずに脚を引いて逃げました。

「ありがとうございます。ありがとうございます」
供の狸はひれ伏して、蜘蛛娘に礼を言います。

「代わって恩を覚えておけ。
どの獣もすっかり頭が弱くなってしまったからな」



村が見えてきます。
祭りのようです。
「狸、子供姿に化けられるか」
「はい」
狸はどろん、と子供姿になります。
「それでよい」

「お嬢さま、賑やかで楽しいですねぇ」
「うむ、楽しいな」
蜘蛛娘は、良い匂いの菓子などを楽しそうに見て廻ります。

「狸、これで好きな食べ物を買うがよい」
蜘蛛娘は兵児帯から金子を出します。
「これは?」
「銭だ。女から頂いた」
「私は今までしていたように残飯でも漁ります」
「そうもいくまいて」
「お嬢さまは?」
「私はよい」

蜘蛛娘は軽々と、若い女を担いで獣道を進みます。
若い女は気を失っています。

「狸、人が寄らば糸を引け。無用に動くなよ」
「はい」

「ご無体な」
気付いた若い女は、糸で後ろ手に縛り上げられ、転がされています。

「安心せい、命はとらん。少し精を吸うだけだ」
蜘蛛娘は、若い女の股ぐらに顔を埋め、長い舌を伸ばします。
「良い匂いだ。ここから吸うのが良い」
「あうう」
若い女は、苦悶と悦楽の表情を浮かべます。

「お嬢さまは人の女が好きですねぇ」
「うむ、精の味が良い」



つづく


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