どっちつかずの気持ち-9
「……ホント、あいつは天真爛漫っつうか……。
悪かったな、二人とも」
ずっと黙って話を聞いていた副島主幹が、クミちゃんの代わりに頭を下げた。
「いえ、俺は全然気にしてないんで」
そう言って久留米さんも煙草をバケツの中に入れた。
そうして副島主幹に向かって、
「じゃあ、そろそろ戻ります」
と、頭を小さく下げてから喫煙室を後にしようとした。
副島主幹は普段とは違ってやけに神妙な顔で、彼の背中を見やる。
「久留米……、お前自分を責めすぎなんだよ。
そろそろ前に進んでもいい頃だと思うぞ」
副島主幹がそう言うと、ドアノブに手をかけたまま彼は、
「……お言葉はありがたいんですけど、もう、俺はそういうのは必要ないんで」
とだけ言ってから、静かに部屋を出て行った。
久留米さんがいなくなると副島主幹は、煙と一緒に大きく息を吐いて、天井を仰いだ。
話の流れは全く掴めなかったけど、あたしはなぜかソワソワ落ち着かなくなった。
「玲香ちゃんも嫌な気分にさせて悪かったな。
付き合ってもいないのに、クミちゃんが勝手に勘違いしてて」
「いえ、あたしも別に気にしてないです」
「実はおれも、久留米が最近笑うようになったのは、間違いなく玲香ちゃんの存在があったからだって思ってたんだけどな。
あいつが笑うなんて、ついこないだまではまるで考えられなかったから」
「…………」
さらに静まり返る室内。
その沈黙の中であたしはある決意をした。