どっちつかずの気持ち-7
俯いたまま何も言えなかったあたしは、ひたすら気まずくてどうやり過ごすか考えていた。
あっさり否定すれば済む話なんだけど、他人の目には恋人のように見えていたことが正直嬉しかったりもするわけで、何食わぬ顔で“違うよ”なんてとても言えなかった。
代わりに、飛んできたのは久留米さんの声。
「……鈴木さん」
クミちゃんは苗字が鈴木という。
「はあい」
恐らく初めて久留米さんに話しかけられたのだろうけど、彼女は全く自分のペースを崩さずに、愛くるしい笑顔を久留米さんに向けた。
すごいよ、クミちゃん。
変に感心しながらもあたしは久留米さんの方をチラリと見た。
「それ、ホント違うから。
宗川さんに迷惑かけちゃうから、勘違いしないで」
「えぇ、そうなんですかあ?
隠さないでもいいのに」
「隠すも何も、ホントのことだし」
呆れた顔をした久留米さんは、全く照れる素振りを見せずに冷静に否定した。
そんな彼を見て、ズキッと胸が痛くなる。
あたしは、あんなに動揺してしまったのに、彼は感情的になることもなく、どちらかと言えば迷惑そうな顔になっていて。
恋人同士に見られて浮かれていたのはあたしだけだったんだ。