どっちつかずの気持ち-5
「ああ、お気遣いなく」
副島主幹は久留米さんにニッと笑いかけてから、何脚か並べられたオンボロパイプ椅子の一つにどっかり座った。
そういえば、久留米さんと副島主幹は以前同じ課で働いていたことがあるんだっけ。
それでも今まで顔を合わせた所を見たことがなかったせいか、この組み合わせはやけに新鮮に見えた。
「どうだ、最近は」
「はい、何とか頑張ってます」
当たり障りのないような会話をしているけれど、どこか久留米さんの顔は強張っている。
副島主幹は見た目こそ怖いけど、みんながみんな口を揃えていい人だと言うし、あたしもそう思うし、だから久留米さんが緊張している理由が理解できない。
「……お前、最近ようやく笑うようになったよな」
「そうっすか?
自分じゃよくわかんないですけど」
副島主幹は久留米さんを見てから、あたしに視線をゆっくり移した。
「まあ、支えてくれる奴がいるってかなり大きいからな。
お前が前に進めたと思うとホッとするよ」
「俺は別に……」
気まずそうに俯いた久留米さんは、自分を落ち着かせるように煙草を深く吸い込んだ。