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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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どっちつかずの気持ち-3

 






「お疲れ」


コトが済んだ塁は、あたしの頬に軽くキスをした。


臨界点を飛び越えてしまったあたしは、その余韻に浸りながらしばらく動けずにいた。


次第に落ち着いていく呼吸と、冷静になっていく頭に反比例するように、罪悪感が込み上げてきた。


あたしは、なんでこんなに弱いんだろう。


塁が他に好きな人がいるのならキッパリ諦めるつもりでいたのに、いざ誘われるとノコノコ抱かれにやってきて。


かと言って、いつの間にか塁一筋でいられなくなった、汚い自分もいて。


だからと言って、すぐに気持ちを切り替えられるほどすんなり事態はスムーズにはいかない。


変わりつつある気持ちがうまい方向に転がっていくとわかっていたら、きっとあたしは塁から離れられるんだけどなあ。


それができないのは、うまくいかなかった時に逃げ場がないのは怖いという、あたしのズルさ。


あたしは、塁のことを考える時間よりも多く考えるようになってしまった、あの人のことをまた思い出しながら、抱き合った後始末をしている塁の背中を見つめていた。



   ◇   ◇   ◇



久留米さんは少しずつ、職場でも明るくなっていったように見えた。


というか、それが本来の彼なんだろうなとも思う。


喫煙室で顔を合わせれば、くだらない話をお互いするようになったし、あたしの携帯の中に入っているメイの画像や動画を見せたりすれば、すごく嬉しそうな顔でそれを眺めていたりした。



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