どっちつかずの気持ち-25
すると、小さく笑った彼は、
「うん、俺一目惚れしちゃったし。
とにかく外見も中身も俺の理想ど真ん中だった」
と、すぐに答え頭の後ろで手を組んだ。
「へえ……。見てみたかったなあ、この久留米さんのハートを射止めた人ってどんな人なのか」
久留米さんが照れもせずにそこまでハッキリ言ったことに、冗談っぽく返すけれど、あたしの心臓は再び早鐘を打ち始めていた。
胸騒ぎによく似たそれを抑えるように、あたしは水色のブラウスの胸元をギュッと握りしめる。
「写真、ダッシュボードん中入ってる」
すると、意外にも久留米さんはあっけらかんとした口調でそう言った。
「……見ていいんですか」
「どうぞ」
あたしは震えた手で、恐る恐るダッシュボードに手を伸ばした。
そこには、おそらくこの車の取扱い説明書や車検証が入った青いファイルが置いてあって、その上にシンプルな銀のフレームの写真立てがちょこんと置いてあった。
裏側に伏せられていたフォトフレームを震える手でそっと持ち、パッと写真が入っている方にひっくり返す。
そこにいたのは、スキー場で撮った写真だろうか、ゲレンデをバックにした満面の笑みを見せている、今よりも幼く見える久留米さんが写っていた。