どっちつかずの気持ち-24
白い煙が、風のない駐車場にゆっくり撹拌していく。
「諦められないってことは、今でも好きなんです……よね」
勇気を出してそう訊ねると、彼は小さくフッと笑ってこちらを見た。
「自分ではそう思ってるんだけど、正直わかんなくなってきた。
アイツが死んだ時は、忘れられるわけねえってずっと思っていたけど、時間が経つにつれてその気持ちがよくわかんなくなるときがあるんだ。
時間ってすげえよな、どんな傷も少しずつ癒やして忘れさせていくんだから。
あんなに好きだったのに、たまにアイツの顔や声がぼやけて、どんなんだったっけって焦る時もある」
彼は寂しそうにそう言うと、すっかり短くなった煙草を備え付けの灰皿に押し付け火を消し始めた。
そして彼はどっかりとシートに身をもたれさせ、目を細めて前を見つめていた。
その表情はどこかぼんやりしていて、心ここにあらずと言った感じで。
きっと、そこに映っているのは、向かいに停められている白い軽自動車なんかじゃなく、その彼女のことが目に浮かんでいるのかもしれない。
「久留米さんがそこまで想う人って、素敵な人なんでしょうね」
あたしは、なんとか平静を装って明るい声でそう言うしかできなかった。