どっちつかずの気持ち-23
「……副島主幹から聞いたんだ」
先に口を開いたのは久留米さんの方だった。
口調はいつもと変わらないけれど、それがかえってあたしを不安にさせる。
「……はい。無神経なこと言ってすみませんでした」
「まあ、いいや。別に口止めしてたわけじゃないし。
副島主幹には色々迷惑かけたからな」
そう言って彼は申し訳なさそうに頭をかいた。
目の前で人が死んでしまったということで、当然警察沙汰になったらしい。
久留米さんは自殺幇助とか殺人の疑いもかけられ、警察に事情を聞かれたそうだ。
でも、断崖から彼女が一人で飛び込んだのを、少し離れた海水浴場から目撃した人が何人かいたらしく、久留米さんの疑いは晴れた。
その時に身元引き受け人として副島主幹に来てもらった……という話を彼はしてくれた。
「……前に一緒に飲んだ時に話してくれた“諦められない人”って、その人のことです……よね」
あたしが恐る恐る訊ねると、彼は窓の方を向いたまま、
「そうだよ」
とだけ言って、煙草の煙を外に吐き出した。