どっちつかずの気持ち-17
塁を問いただして、彼の口から真実を知り、手放すのがふと怖くなったからだ。
……フェアじゃないよなあ。
久留米さんを好きになりつつあると自覚していても、この関係を断ち切れないのはあたしの弱さ。
多分副島主幹の話を聞かなかったら、あたしはこのまま久留米さんと約束した通り、だらしない関係を断ち切れたと思う。
でも、久留米さんの中にはあたしじゃない他の女の存在がいる。
それを知って、純粋に彼を想っていられるほどあたしは強くなかった。
久留米さんが時折見せる寂しそうな顔も、懐かしそうに目を細める顔も、みんなその同棲予定だった女の人に向けられていたんだ。
あたしは過去に、彼女がいる人を好きになって、結果略奪まがいのことをしたことだってある。
恋愛は弱肉強食、それがあたしのモットーだったけれど、死んでもういない女とどう戦えっていうんだろう?
負け戦とわかっていて、逃げ場もないまま久留米さんに飛び込む勇気なんてない。
そんな自分のズルさを知ってしまったから、あたしは塁に関してきっと寛容になれたんだ。
あたしは逃げ場を確保するかのように、繋がれた手にグッと力を込めた。