投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

鳳学院の秘密の最初へ 鳳学院の秘密 11 鳳学院の秘密 13 鳳学院の秘密の最後へ

第2章 疑惑-2

 「まぁ、紫織さん」
 「あら、薫」
 放課後、薫と偶然出会ったのは、図書室へ向かう廊下を曲がったところだった。胸に楽譜を抱えているところを見ると、これからピアノのレッスンのようね。
 「京のお茶会以来ですね、御無沙汰してます」
 「そうね、学院で会うのは今学期初めてかしら」
親しげに微笑む薫を見ると、私も顔が綻ぶのを覚える。常日頃、感情を表に出さないよう躾けられてきたが、社交の場と違い、彼女の前では表情を作る必要もなく、本当に和やかな気持ちになれる。
 「お茶会と言えば、あの時お召しの桔梗の振袖、とてもお似合いでしたわ」
 「貴方に褒められると嬉しいわ、あれは私も気にいってるのよ」
 着物の話に花が咲き、一時の立ち話を楽しむ。彼女は気を許せる数少ない友人、いえ、妹のようなものかしら。薫の方も姉のように慕ってくれるので、気兼ねなく会話ができる。
 秋の園遊会に着ていく着物の話が一段落すると、先週末に見かけた諍いが脳裏をよぎる。せっかくの良い気分に水を差すのは気が引けるけど、悪いところをたしなめるのも姉たる私の役目。ここは心を鬼にしましょう。
 「そう言えば薫、また九条家と揉めていたわね」
 「えっ、どうしてご存じなのですか?」
 「偶然見かけたのよ。何度も言いますけど、ああ言う高飛車な態度は感心しないわ」
 こんなことを言うと、また臍を曲げられるけど仕方ないわね。多分相手のせいにして、自分は悪くないと主張して来るでしょうけど‥
 「‥はい」
 「えっ!?」
 思わぬ反応に、私は驚きを隠せなかった。
 「そうですね、あの時はわたくしも少し熱くなっていましたわ。九条会長にも失礼でしたね」
 ‥九条会長?絶対に会長と認めず、いつも九条家と呼んでいた薫が、会長?
 「どうしたの薫、何かあったの?」
 「いえ、あの後生徒会室でお話しまして、学院を思う九条会長の志に感銘を受けましたの」
 穏やかな表情の薫はいつもの様子と変わらない。だが、私は信じられないものを見る思いだった。
 「わたくし会長になることばかり考えていて、真に学院の秩序を求めていなかったのですね、本当に反省してます」


鳳学院の秘密の最初へ 鳳学院の秘密 11 鳳学院の秘密 13 鳳学院の秘密の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前