第2章 疑惑-14
「なら、このDVDを破棄しましょう。見なかったことにすれば‥」
あたしはかぶりを振って皆まで言わせない。
「なくなったらなくなったで、どこで失くしたかを探すから一緒なことよ。紫苑、これからやることには、あんたの協力が欠かせないのよ」
「‥で、でも‥」
「突き止めるのは、売春組織の実態まで。どれだけの規模の組織か知らないけど、学外に追放できるだけの証拠を集めたら、後は学院に任せるわ。瀬里奈もそれでいいわね」
「‥わかったわ」
明らかに不満な顔をしているが、状況を察してくれたみたい。紫苑は真っ青な顔で何かぶつぶつ呟きだすが、やがて他に選択肢がないと悟るや、諦めたように溜め息を吐く。
「‥ひどい災難ですわ、どうしてこんなことになったのでしょう」
「言いたくはないけどね、パンドラの箱を開けたのはあんたでしょ」
これが止めとなり、紫苑は絶望的な表情で、頭を抱え込んでしまった。
パンドラの箱ね、自分で言っといてなんだけど、開けちゃいけないものを見てみたら、とんでもない災厄が詰まっていたわ。
祈るような気持ちであたしはもう一つ願った。どうか箱の底には希望が残っていますように。