第2章 疑惑-11
「‥瀬里奈、ひょっとして新城先輩と知り合いなの?」
去年インタビューに行ったのはあたし一人だった。瀬里奈は面識ないはずだけど、ビデオの途中であたしより先に先輩に気付いたのがひっかかる。
「‥中学でテニス部だった時の先輩よ。色々お世話になったわ」
そうだったんだ。テニス部を途中で辞めたとは聞いていたけど、同じ中学の先輩だったなんて。
「曲がったことが嫌いで、正義感が強くて‥‥絶対、絶対こんなことする人じゃない‥」
悔しさを滲ませた声で呟き、俯いた瀬里奈は泣いてるようにも見えた。きっと新城先輩も、彼女にとって大切な人なのだろう。かける言葉が見つからず、あたしは言葉に詰まった。空気が張り詰めたように重く、息苦しさを覚える。
唐突に瀬里奈は顔を上げると、何か決意したような面持ちで部室を出ようとする。考える前にあたしは彼女の前に立ち塞がっていた。今行かせたら何をしでかすかわからない。
「どいて沙羅、邪魔よ!」
「駄目、大体どこ行く気」
「これ持ってたの副会長でしょ、あいつをとっちめれば何かわかるはずよ」
今の瀬里奈のとっちめるとは、実力行使に他ならない。あたしは強引に押しのけようとする瀬里奈を押さえながら、必死で頭を働かせた。
「いい、聞いて!副会長を殴っても何も解決しないわ、これがあの子の私物と考えにくい以上、事態が悪化するだけよ」
「どういう意味よ」
「ビデオの中で先輩は二年生って言ってた。テニスウェアもインターハイで着るって言ってた。つまり、あれは去年撮られたってことよ」
新城先輩がインターハイに出場したのは去年だけ。今年は予選落ちして出場の機会を逃している。
「それに最後に売春倶楽部って言ってた。つまり、うちの学校に秘密の売春組織があるかもってことなのよ。当時一年生だった副会長が、こんなの組織したなんて考えにくいでしょ」
「じゃあ、どうしてあいつがこんなもの持ってるのよ」
「わかんないよ。大体あたし達は、何であの子がこんなもの持ってたかも知らないでしょ」
「そんなのあいつに聞けばわかることでしょうが」
「だ〜か〜ら〜、瀬里奈がぶん殴ってとっちめちゃったら、黒幕が逃げちゃうでしょ」
黒幕と言う言葉に反応してか、瀬里奈の顔に、戸惑った表情が浮かぶ。
「とにかく座って。これからどうするか話し合いましょ」
不承不承と言った感じが拭えないが、それでも瀬里奈は腰を下ろす。さてこれからが大変だわ。彼女を納得させるだけの方針を打ち立てなきゃ。
「ねぇ紫苑、この前売春の噂がどうこうって言ってたでしょ。あれ、情報源は何?」
あたしたちのやり取りを茫然と眺めていた紫苑は、不意に呼ばれてびっくりしたようだった。しっかりしてよ、と目で合図を送ると、ようやく彼女にも冷静さが戻ったようだ。頼りない口調だが、それでも質問に答えてくれる。