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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第1章 日常-2

 学院で全寮制が導入されているのも、その教育目標の一環で、共同生活によって社会性と自立心を養うことが目的だが、その実、親元からの援助を排し、生徒に甘えをなくさせる意味合いも兼ねている。
 また生徒間での自治を求め、生徒会執行部に大きな権限を認めているのも大きな特徴と言える。学校行事の企画、運営や校則の執行はもとより、予算会議での発言権や生徒への処罰執行権など、執行部には学校運営者の一員として権限が付与されている。その為、毎年六月の選挙で鳳学院生徒会執行部に選ばれるということは、一種のステイタスを伴い、大変な栄誉となる。
 しかし、名家の子息令嬢は個性派が多く、例年問題は尽きない。実際私の在校時にも、生徒会では手に負えない事態が多々発生した。むろん学院側から解決を図る場合もあるが、あえて生徒間で問題解決に取り組ませることが教育の狙いであり、この一見無責任ともとれるシステムが支持され、学院は名声を保持している。
 「おや、早いですな、桜井先生」
 考え事に耽っていたせいで、声をかけられるまで気がつかなかったが、いつの間にか下駄箱には年配の男性教諭が現れていた。
 「あっ、おはようございます、武藤先生」
 「おはよう、今朝は随分穏やかな気候になりましたな」
 三年A組の担任にして私の指導教員は、いつもののんびりした調子で話しかけてくる。気さくな雰囲気を作るのがうまく、生徒にも人気のベテラン教師。同組の副担任を務める私は、かつて担任でもあった先生と一緒に職員室へ向かう。
 「本当いい天気ですね、でもあまり気持ちがいいと、授業中生徒が寝てしまいそう」
 「ははっ、春眠ならぬ、秋眠暁をなんとやら。陽気とじじいの退屈な授業ほど、夢の世界に誘うものはないですからのぉ」
 「あら、先生の授業は退屈じゃありませんわ。本当に、うまくまとまっていて感心します」
 「嬉しいことを言ってくれますな、とは言え、それは教員になってからの感想。学生の頃はよく寝ておりましたぞ」
 「えぇっ、私そんなに寝てました!?」
 「はっはっはっ、嘘じゃ」
 思わず口を尖らせるが、愉快な気分が込み上げてくる。そう言えば進路に悩んでいた頃も、こんな風に楽しませてもらったかしら。
 教職の道を志し鳳学院の教師となった今、私は素晴らしい理想に出会うことができ、その理想を実現するために働けることを誇りに思っている。
ふと、廊下の窓から空を仰げば、抜けるような青空が広がっており、素晴らしい一日の始まりを予感させる。未来は明るい希望に満ちており、不安を感じさせるものは何もなかった。



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