桜貝の流儀 ☆-3
「気持ち良いのか?、磯崎?」
痛みによる嗚咽を穿き違えた少年の指先に、更なる力が加わる。
「何かすごく熱くてコリコリするな」
初めて知る感覚に喜びの色を隠せず、その感触を仲間たちに伝える少年。
下着越しであったが、初めて他人に触れらる事による極度の羞恥から上気する恵利子の身体。
発せられる熱は、恵利子の身体から微かな香りを立ち昇らせていく。
それは万人が感じられる程強い物では無かったが、恵利子を左側で抑え付ける少年の嗅覚を痛く刺激した。
もちろんそれは香水の様な物では無く、恵利子自身より分泌される体液の匂いである。
少年はその香りが恵利子から発せられている事に気付くと、自身もその薄布が当たる部分を目にし触れたい衝動に駆られる。
「そろそろ変わってくれよ」
香りに気付いた少年は堪りかね、リーダー格の少年に訴える。
少年たちは対等な力関係では無かったが、上下関係があると言う程でも無かった。
強いて表現すれば、恵利子の魅力に吸い寄せられた烏合の衆である。
この場合それが恵利子に大きく味方する事になる。
「それより、ここがどうなっているか見てみようぜ。おれ、磯崎のマンコがどうなってるか見てみたいんだ」
仲間?の言葉を無視し、リーダー格少年の指先がクロッチの縁に伸びる。
自分の言葉に耳を貸さず、恵利子を独り占めする仲間?に嫌気がさしたのか、左脚を抑え付ける少年の拘束が緩む。
羞恥を強いる力が緩んだ事を感じ取ると、恵利子は大きく潤んだ瞳でその少年の心を覗き見る。
僅か数秒の事であるが、その憂い秘めた瞳に少年は魅入られる。
「馬鹿、離すな!」
顔を寄せ、クッロチ縁に指先を滑り込ませた少年が叫ぶが、時すでに遅く拘束を解かれた左脚踵が少年の顔面を突く。
非力な少女と言えど脚の力は腕の数倍有り、少年の鼻と前歯を折るのに十分であった。
後方に跳ね飛ばされ、倒れた少年の鼻孔と口中から大量の血が飛び散る。
その異常な光景に右脚を抑え付けていた少年が驚き怯んだ隙に、恵利子は少年の腕を間接と逆方向に捩る。
声にならない様な悲痛な叫びが響く。
ほんの数秒の出来事であった。
拘束を解いてしまった少年のみが、驚くべき逆襲を逃れる事が出来た。
駆け去る恵利子を追う事も出来ず、その場に立ち竦むしかなかった。
しかし一瞬立ち去る恵利子の表情を垣間見た少年の目に映ったのは、普段の可憐な少女からは想像すら出来無い別人の様な表情と異常な目付きであった。