百合の花、繚乱-1
とんでもない爆弾発言をしたと言うのに、松本は全く動じないでケラケラ笑いながら小夜を仰ぐ。
「やだあ、そんな変な意味なんてないですよう。ただ、小夜さんがあまりに深刻に悩んでいるみたいだし、少しでも不安を取り除いてあげたくて……」
「でも、まずいってそれは」
「大丈夫ですよ、あたし達は“女同士”なんだし! 例えば一緒に温泉旅行に行ったら同じお風呂に入りますよね? 当然お互い裸になりますよね?」
「う、うん……」
「小夜さん経験ないですか? 友達と温泉みたいなとこに行って『誰それの胸大きい〜、いいなあ』みたいな見せ合いっこしたこと」
「それはあるにはあるけど……」
「要はそれと同じ感覚です! ただ対象が胸じゃなくてアソコになったってだけ」
オイオイオイ! 随分都合よく言いくるめてんじゃねえか!
ギリリと奥歯を噛み締めグッと拳を握る俺。
小夜のピンチだ、助けてやんねえと、あの変態女に好き放題されてしまう……!
毛布を少しめくり、松本が小夜に手を出した瞬間、飛び起きて助けてやると、スタンバイ。
だが、しかし。
「そ、そっか……」
と、恥ずかしがりながら松本をジッと見つめる小夜の姿が目に飛び込んで来た。
その真摯な眼差しは、俺に嫌われたくない一心で、自らの身体のコンプレックスを勇気を持ってさらけ出そうと決意していたようだ。
俺のために恥を凌いで文字通り一肌脱ごうとする、そんな小夜が愛おしくてたまらない……のだが。
アクリル毛布を握る手に更に力を込め、俺は心の中で叫んだ。
小夜ちゃん、違う! 他の人に確認してもらわなくていいの! 小夜の大切な所を見ていいのは俺だけなの!
俺、もう明るいとこでセックスしたいとか、小夜の匂いを嗅ぎたいとかそんな変態じみたこと言いませんから、やめてぇぇぇ!!!
ほんの少しの自分勝手な欲望が、まさかこんなことになるなんて……!
どうしよう、この展開をどうやって阻止すればいいんだ!?
涙目になりながら身悶えしてる内に、突然毛布の外でガタン、と大きな音がした。
なんだ……?
慌てて毛布をペラリと少しだけ剥ぎ取り、姿見で二人の様子を確認しようとして、俺は口をアングリ開けたまま固まってしまった。