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Sincerely -エリカの餞-
【二次創作 その他小説】

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001 平穏な学校生活・前-2

「じゃあ部屋決めるぞ。えーっと、男子も女子も部屋の数は同じで、十人部屋が一つと、六人部屋が二つな」
「えー、お部屋、三つしかないのー!?」
「みんなの部屋荒らし回ろうと思ってたのにぃー!」

 今度は天然ボケでムードメーカーの香草塔子(女子四番)と、女子代表お調子者でトラブルメーカーの幸路知佳子(女子二十番)のコンビだった。千恵梨と同じグループのメンバーと言うこともあってか、千恵梨は仁王立ちになり、ぷりっと膨れ少し怒ったふりをしてみせる。

「三部屋のなにが不満なのよー? 言っとくけど、あたしたちは問答無用で大部屋だからね。わかった?」
「おお、じゃあ夜は枕投げね! 十人で枕投げなんて燃えるわー!」

 柔道部に所属する知佳子は力勝負はなにかと血が騒ぐのか、ガッツポーズを作り豪快に笑う。塔子が「よっ、ナンバーワン!」と茶々入れるのを見て、クラス中から笑いが起こる。

「じゃ、泉沢たちは大部屋でいいんだな?」
「ええ、ありがとう、筒井くん」

 惣子朗が確認を取りながら、黒板に名前を書き連ねていく。



【女子大部屋:泉沢、香草、佐倉、田無、七瀬、羽村、深手、武藤、幸路】



「一人足りないな」
「あ、じゃあ、誰か私たちのグループに入ってくれる人いるー?」

 千恵梨が両手でメガホンを作るようにして声を掛けると、「あ、はーい」と言って手をあげようとしたのは白百合美海だ。

「バカこら、美海はダメに決まってるだろ!」

 慌てて美海を制したのは間宮果帆(女子十五番)だった。ぎっしりと漆黒の睫毛が詰まった勝ち気な猫目を吊り上げ、やや癖っ毛の黒いショートヘアが跳ねる。勢いに任せ椅子から立ち上がると 、スレンダーな身体をやや前のめりに倒して前の席の美海の頭を小突いた。

「いたっ、果帆〜?」
「あんたはあたしらと同じ部屋だっつーの」
「そうそう、美海、裏切っちゃダメよ」

 美海から二つ斜め前の席で、黒いベストの華奢な背中がくすりと微笑んで振り返る。彼女は和歌野岬(女子二十一番)──仲間内ではサキとの愛称で親しまれる彼女は、雪のように色白で儚げな可憐な美少女であった。黒檀の木のような真っ直ぐの黒髪を指で撫で、淑やかに微笑む岬に美海は少したじろいだ。

「う……、でもサキちゃん、どっちにしたってあたしたちも一人分空いちゃうよー?」
「まあ、確かにね」

 岬は軽く相槌を入れてすぐに顔を前へ戻してしまう。その、右から二つ隣の席で、岬と特に親しい小日向花菜(女子五番)がおかしそうに微笑した。
 美海は困ったように果帆を見詰める。

「いや、あたしに目で訴えられても……」
「あ!」美海は今度はするりと左後ろを振り返った。
「紗枝子ちゃん、一緒にどうかな?」
「え……」

 いきなり話を振られて水鳥紗枝子(女子十六番)は一瞬面食らったような表情をする。基本的に一匹狼でクールな彼女にしては珍しい反応。紗枝子はこの春に宍銀中に編入して来たばかりのクラスメイトだった。彫りが深くはっきりとした顔だちで、とても同じ中学生とは思えないような大人びた雰囲気を持っていた。そのため、なんとなくクラスにはまだあまり馴染めていない印象である。もっとも、彼女自身、積極的に交友するタイプではないのだが。
 美海が可愛らしく小首を傾げながら紗枝子に微笑むと、紗枝子はじっくりと(なにを考えているのか読めない表情で)その顔を見詰めて、ややして、唇の端を持ち上げながらふっと息を吐いた。

「白百合さんたちがいいなら、お願いしようかしら」
「やったー、決まり!」

 美海が嬉しそうに手を叩く。ピンク色のカーディガンの周辺を、美海のふわふわとカールした長髪が動きに合わせて跳ねる。

「委員長ー! あたしたち決まりましたー!」
「了解〜」

 千恵梨と惣子朗が頷いて、黒板に新しく名前を書き足していく。



【小部屋@:小日向、白百合、間宮、水鳥、八木沼、和歌野】


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